ファッション
連載 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」

「消費者」という担当意識をシフト マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」Vol.36

 前回のコラムで最後に述べたのは、「私たちが今生み出せる、最大のパワーは、消費者が求める『WANT』を変えていくこと」。これについては、私から提案がある。

 今なおコロナ禍が続く我々は、「行動制限のおかげで、ちょっとは環境破壊がスローダウンできているのではないだろうか?」と感じているかもしれない。けれど残念なことに、コロナ禍にあっても状況は悪化の一途をたどっている。私たちはいよいよ欲求を整理して、選択し、よりリベラルなものにシフトしなくてはならない。

 モノ作りを説明したりサステナブルなビジネスを広げたりする際、心の中で常に「ん?辻褄が合わないなぁ」と感じてきたことがある。「消費者」という言葉だ。

 私たちが求めているサーキュラーエコノミーとは、”サーキュラー”つまり”循環”を意味している。その反対は”リニアエコノミー”と呼ばれる、まさしく今までのような一方通行のワンウェイ型社会。山手線のようにぐるぐる回っているのではなく、真っ直ぐ、ものすごいスピードでひた走る乗り物に今、社会全体が乗車している。このままでは、どこかで何かにぶつかって、大事故を起こしてしまう。

 リニアエコノミーでは、「消費者」という言葉はぴったりだった。ただ”消費していく担当者”、まさにこの”消費”という言葉はワンウェイだ。正直、今の社会にはそぐわないネーミング。サステナブルな商品や企画をお金を出して受け取っていただく大切なお客様には、私は「消費者」とは違う名称が必要だと心から感じている。だからと言って、これといって新しいネーミングにしっくりくるものも見つかっていない。最近は「生活者」なんて言葉もあるが、ここでは仮に「使用者」と表現してみよう。

 私が生産者として忘れないように心がけていることは、常に自分も「使用者」であるということ。どんな生産者も食べ物を食べて洋服を着て毎日を過ごすわけだから、みんなが「使用者」だ。

 その感覚を忘れないことは、自分が商品を送り出す時のヒントになっている。「これ、本当に私使う?」など、買いやすい価格帯を目指しながらも「安かろう悪かろう」には踏み込めなくなるのだ。

 そして「自分は受け取り側だ」と感じている人も、それぞれは未来を作る「生産者」であり、明日を美しくデザインするためのデザイナーであることに気づいて欲しい。「『消費者』が求めるもの」に答えることは、何かの欲求や欲望を満たすための商品を作り出すこと。だから求めるものの価値観のシフトが必要で、循環型の社会では美しさの定義を変えてなくてはならない。その中で「消費者」というネーミングは邪魔なのだ。REuse・REcycleという考えは、「RE」とつくだけで、何か汚いものという印象を大きく与えてしまい、手を出さない「使用者」がいる。いっそのこと「RE」つけず、「サイクル」だけでいいんじゃないかと日々感じている。ネーミングが与える意識感覚は、行動範囲に大きなインパクトを与えるのだ。

 「消費者」という言葉が見直されれば、その立場を自然と受け入れる体制も整い始めるのではないだろうか?そして、その一歩が「使用者」が求める「WANT」に気づくきっかけになるのではと考えている。私からの提案は、まずネーミングから変えようってこと。小さなことかもしれないが、今までの当たり前から変えなくてはならない。

 「生活者」「使用者」よりも良い言葉はないだろうか?ネーミングを募集したい。

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