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1万人のサステナブルアンバサダーを育成する Z世代を牽引する若きリーダーYouth in focus vol.5

 ミレニアルズやZ世代と呼ばれる若者たちは今何を考え、ファッションやビューティと向き合い、どんな未来を描いているのだろうか。U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」では、業界に新たな価値観を持ち込み、変化を起こそうと挑戦する若者たちを紹介する。連載の5回目は、サステナブルな社会の実現に向けて日本の若者たちと企業をつなげるプラットホームの運営や、企業、自治体、大学を連携させた、サステナブルプロジェクトの企画運営などを行う佐座槙苗SWiTCH代表理事(26)にフォーカスする。

 「人間と自然が共存できる仕組みを作りたい」――佐座は幼少期からそんなテーマが常に頭の中にあったという。高校卒業後は、海外の大学へ進学し、サステナビリティについて学びを深めた。2020年には、環境問題に声を上げる世界の若者たちが「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)の疑似版として開催した「モックCOP26」に、グローバルコーディネーターとして参加。世界140カ国の代表学生らと気候変動政策に関する本格的な提言を国連や各国政府に行なった。

 今年1月には、日本を世界基準の循環型社会へ移行することを目指し、一般社団法人SWiTCHを立ち上げた。企業や大学などでサステナブルな環境を構築するプログラムの普及や、1万人のサステナブルアンバサダー育成を目指したZ世代への教育普及活動などを開始した。SWiTCHは、ロンドン芸術大学(University of the Arts London)の卒業生で構成するデザインチームも抱え、企業とコラボして廃棄物を用いたアートやオブジェなどを製作することで、サステナブルな社会へのメッセージを発信する。過去には「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「スワロフスキー(SWAROVSKI)」、セントマーチン美術大学(Central Saint Martins)とのコラボプロジェクトも手掛けた。グローバルなネットワークを生かし、サステナビリティ分野における若きリーダーとしてZ世代を率い、日本のサステナビリティの動きを加速させる。

WWD:環境問題に興味を持ったきっかけは?

佐座槙苗SWiTCH代表理事(以下、佐座):子どものころから自然と人間がどうしたら共存できるかに興味がありました。社会問題にも関心が高く、学生時代には発展途上国の支援プロジェクトなどにも積極的に参加しました。振り返ってみると、自分の中で常に世界の人権や環境問題、共存の仕組み作りが大きなテーマだったのだと思います。

WWD:学校教育の影響が大きかった?

佐座:そうですね。私は中学までインターナショナルスクールに通い、高校は東京のアメリカンスクールに通いました。クラスメートが国際的なバックグランドを持っていたので、日々さまざまな国際問題に触れてきました。幼少期は福岡の自然に囲まれた環境で育ったので、自然に対する愛情はもちろんありますが、それよりも自然を取り入れた街づくりに関心があります。今後温暖化がさらに加速し、人口も増える中で自然と共存できる都市開発を実現しなければいけないからです。

WWD:高校卒業後は、海外の大学で環境問題を学んだ?

佐座:はい。カナダのブリティッシュコロンビア大学に進学し、都市と自然環境と経済の関係性について学び、その後ロンドン大学大学院でサステナブル・ディベロプメントコースを受講しました。ロンドン大学大学院は世界でもこの分野で歴史のある学校で、各国の環境省や国際機関から派遣された人など、世界中からハイレベルな学生が集まっていました。文化的・経済的背景の異なる人たちと多様性を保ちながらサステナブルな社会を実現することは可能だと確信できた経験でした。

WWD:世界中から集まった学生たちと意見を交わす中で、日本の現状はどう見えた?

佐座:日本にはたくさんの資源があり、リソースをうまく活用すれば循環型社会をいち早く実現できるポテンシャルがある。しかし、言葉の壁で、日本に入ってくるサステナビリティに関する情報量が圧倒的に少ないことが問題でした。去年、やっと脱炭素が取り上げられ、今までどこに向かえばいいのかわからなかった企業も、ひとつの大きな目標に向かってディスカッションが始まりました。循環型社会に向けたルートさえ分かれば、かなりのスピードで取り組めるのではないでしょうか。これから政府や企業、他業種がどうやって連携できるかが勝負だと思います。

WWD:今年1月に立ち上げたSWiTCHの具体的な活動内容は?

佐座:大きな柱は、これからの未来を担う若者と企業をつなげることです。日本のZ世代は、問題意識があっても企業との連携の仕方がわからなかったり、行動できる場が限られていたりする。循環型社会を実現するためには、若者が意思決定の場で発言できる環境を作り、これまでの縦割り式ではない柔軟な社会作りがカギになります。1月には、若者による提言をまとめることを目的に、学生を集めたフォーラムを開催しました。そこで見えてきた最大の課題は、サステナブルに関するリテラシーが他国に比べかなり低いことです。まずは、サステナビリティに関する知識の底上げを目指し、2025年の大阪万博に向けてZ世代の環境アンバサダー1万人を育成します。加えて、日本企業に向けたサステナブルな組織作りのコンサル事業や世界のサステナブルに関する情報発信、国内の事例を海外に発信するお手伝いもしていきます。現在、エレン・マッカーサー財団によるプロジェクトも受講していて、企業でのサステナブルな組織体制の作り方についても学んでいます。あとは、サステナブル教育を専門的に受けたロンドン芸術大学の卒業生によるデザインチームがあり、循環型の商品開発やアートプロジェクトも手掛けます。国内では、廃棄衣料品を原料としたファイバーボード“パネコ”の開発に携わりました。

WWD:そのほか、企業と今後取り組みたいことは?

佐座:今、循環型社会を体験できる展示スペースの製作を進めています。循環型社会とは、ゴミと汚染を排出しないデザイン、廃棄物を循環させ、素材として使い続けること、自然環境を再生させることの3軸から成り立ちます。さまざまな企業と連携して、この3軸を理解するための具体的な事例を集めた空間を作りたい。商業施設やカフェなどで仕掛けたいですね。ファッション業界に関しては、現在は服から服を作ることに集中していますが、“パネコ”のように服から違った価値が生まれる技術がもっと発展してほしい。マテリアル開発にも協力したい。

WWD:すでにたくさんのプロジェクトを手掛けているが、佐座さんのモチベーションは?

佐座:アプローチは確かにさまざまですが、私が成し遂げたいことは循環型社会に向けた基盤を作ることと、そのための教育の場を提供すること。まずはサステナビリティの情報や知識を一定のレベルに引き上げないと、次のステップに進めません。サステナブルな社会が、自分にとっても社会にとってもベターな選択肢であることを広めたいです。

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