ファッション

新生「プラダ」唯一の日本人モデル ミウッチャとラフに選ばれた無名の新人タイラ

 ラフ・シモンズ(Raf Simons)が共同クリエイティブ・ディレクターに就任した新生「プラダ(PRADA)」のデビューショーで、唯一の日本人モデルとして起用されたのがタイラだ。2月に発表した2021-22年秋冬コレクションにも連続で登場し注目を集めるも、「プラダ」のモデルとしてエクスクルーシブで契約を結んでいるため、他ブランドのショーには参加していない。

 ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズに選ばれた彼女は、1995年生まれで北海道出身。学業を優先していたためモデル業には本腰を入れておらず、ファッション・ウイークに参加したのは2021年春夏シーズンが初めてだった。現在はアメリカ最大手のモデル事務所のフォード(Ford)、イギリスのストーム(Storm)、日本のビヨンド(Beyond)に所属している。無名の新人モデルとして一気に注目を集める彼女に、「プラダ」に起用された経緯やコロナ禍で開催されたファッション・ウイークの裏側について聞いた。

社会貢献を誓う勤勉な26歳

ーーモデル業を始めたきっかけは?

タイラ:ファッション業界で国際的に活動していた知人がモデル事務所を立ち上げ、学生時代にスカウトされたことがきっかけです。

ーー事務所所属後はどのような活動を?

タイラ:当時はイギリスに留学中で、ゴールドスミス・カレッジ(Goldsmiths College)で人類学と社会学を学んでいました。いくつかの雑誌の撮影に参加しましたが、学業が忙しくモデル活動はほとんど行なっていなかったんです。ファッション・ウイークのキャスティングやショーの期間は、大学のテスト期間と重なっていて、挑戦する機会がありませんでした。

ーー初参加となった21年春夏ミラノコレで、「プラダ」に起用された経緯は?

タイラ:ゴールドスミス・カレッジを卒業し、パンデミックの影響もあって日本に一時帰国していました。ある朝、東京の自宅でイギリスのモデル事務所から「『プラダ』からエクスクルーシブでリクエストが来ている」とメールが届いており、ミラノへ急遽飛びました。プラダ本社でミウッチャやラフを含むクリエイティブチームと顔合わせをし、正式にオファーをいただきました。

ーーコロナ禍、ショー映像の撮影はどのように行われた?

タイラ:キャスティングの段階から現場を出入りする全ての関係者に、毎日必ず抗体検査を受けることが義務付けられていました。警備員が多く配置されていて、モデルを含めたチーム全員がソーシャルディスタンスを保っていること、マスクを着用していることなど、定められた感染対策が徹底して守られているかを常に監視されていました。モデルは複数から体に直接触れられることが避けられないし、ヘアメイクをした後はマスク着用が難しいため感染リスクが高い。だからこそ、現場で感染対策がしっかりと行われていたことはとても心強く、安心して仕事に集中することができました。

ーーコロナ禍で開催されたファッション・ウイークはどんな雰囲気だった?

タイラ:21年春夏の「プラダ」に起用されたモデルは全て新人で、さらに初のデジタル発表ということで、クリエイティブチームやプロダクションチームなど現場全てが協力し合う、一体感のある現場でした。パンデミックでさまざまな縛りがある中、「プラダ」以外の各ブランドも試行錯誤を重ねながら多様な手法で発信している様子に新たな可能性を感じました。「#BlackLivesMatter(黒人の命は大切)」や「#MeToo」運動といった社会政治的な動きとも相まって、ファッション業界の在り方を多角的に見直していくためのきっかけとなりそうなシーズンだったと思います。

ーーモデルとして心掛けていることは?

タイラ:モデルの仕事は待ち時間が多く、普段から時間が有効活用できるように心掛けています。現場にはキンドル(Kindle)やiPadを持ち込んで読書したり、オンラインコースを受講したり、最近はポッドキャスト(Podcast)を聴くことも増えました。食事にも気を付けています。仕事中にアドレナリンが出ていると食べるのを忘れてしまったり、空腹を感じなかったりすることもありますが、モデルの仕事は頭や精神を使うだけでなく、肉体的にもエネルギーをたくさん消費します。だから栄養バランスのとれた食事と水分をこまめに取るようにしています。小腹が空いた時にはすぐ栄養補給ができるよう、軽食をカバンの中に常備しているモデルも多いです。モデルとして良いパフォーマンスを発揮するために、食事は重要です。また他人と比較したりせず、自分らしさを大切にして自信を持てるようにしています。

ーー目標とするモデルは?

タイラ:ファッション業界の人種差別を無くすためにさまざまな取り組みを行うアデスワ・アイゲウィ(Adesuwa Aighewi)や、女性をサポートする活動に積極的なアジョワ・アボアー(Adwoa Aboah)です。アボアーが友人と共に設立したオンラインコミュニティー「ガールズ・トーク(Gurls Talk)」のポッドキャストをよく聴いています。環境問題にまつわる本を執筆するリリー・コール(Lily Cole)の著書「Who Cares Wins」や、同書と関連したポッドキャストもおすすめです。水原希子さんやソーラ・チョイ(Sora Choi)も尊敬しています。

ーー今後挑戦したいことは?

タイラ:曖昧に聞こえるかもしれませんが、日頃から何らかのかたちでより良い世界の実現に向けて社会貢献したいと考えています。これはファッション業界だけに限りません。ユニークな個性を持って生まれ育った一個人として、切り取られ方によってはマイノリティーとして捉えられる面を持って生きてきた一人の人間として、私の経験や価値観、考え方を通してより良い社会を作り上げていくために貢献できることが何かあると信じています。具体的にどのような方法で何をすべきかはまだ不明瞭ですが、徐々に見極めていきたいですね。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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