ファッション

“サステナブルは現代のパンク” マリエと制作チームが4コマ新連載「プラスチックモンスター」を語る

 「WWDジャパン」は、2月1日号から4コマ漫画の新連載をスタートする。タイトルは、「プラスチックモンスター(Plastic Monster)」。太平洋を漂うプラスチックごみから生まれたモンスターと、その相方が織りなす日常のストーリーを展開する。プロデュースを手掛けるのは、マリエのブランド「パスカル マリエ デマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS)(以下、PMD)」だ。4コマ漫画が誕生した背景やこだわりをマリエと、制作チームのメンバーでストーリーを担当するコウスケ、イラストを担当するダンクウェルの3人に聞いた。

WWD:なぜ4コマ漫画を?

マリエ:きっかけは、「PMD」での体験です。自分たちで納品まで全てを行っていますが、ビニール袋で梱包しなければ商品を扱ってくれないECサイト、コンセプトに掲げるサステナブルやエシカルと現実の矛盾がもどかしかった。サステナブルに関しては、SNSなどでも自らメッセージを発信していますが、長期的な視点で考えるとブランドとして打ち出せるアイコニックなキャラクターが必要だと思い始めました。そんな時にコウスケさんと知り合い、彼の未来のビジョンにシンパシーを感じて、「プラスチック・ゼロに挑戦したい」と相談しました。「4コマ漫画とかあったらいいね」と盛り上がり、10年来の知り合いであるダンクウェルさんなら私の思いをすてきにキャラクター化してくれると、イラストを依頼しました。

WWD:テーマはどのように決めている?

マリエ:私が普段抱えているモヤモヤを箇条書きにして二人に提案しています。普段から「これは正しいのか?」「カッコいいことができないか?」と考え、心のどこかで矛盾を探しています。その“カッコいい”ことが、私にとってはサステナブルな活動。ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)の言葉にも通じますが、「サステナブルは現代のパンク」と考えています。社会への反発やメッセージがファッションに表れるように、2021年を生きる私たちのパンクは、大量生産や遺伝子組み換え作物など、今の世の中の当たり前に対する反発である“サステナブル”ではないでしょうか。

 漫画のテーマはファッションをメーンにしつつ、「ビニール袋は有料なのに、お箸やスプーンはなぜ無料?」といった、日常生活の疑問や矛盾も取り上げます。ファッションとは本来、“流行”を意味する言葉。ファッションを“洋服”だけでなく、“おしゃれなライフスタイルの一部”と捉え、ウエアラブルなもの以外にも着目したいです。

コウスケ:ファッション業界の廃棄問題など、皆さんに知ってもらいたい知識からビニール袋といった身近な日常生活のネタまでを幅広く扱うことで、4コマ漫画が皆さんの考えるきっかけになればうれしいです。

WWD:4コマ漫画では、相方の“アイツ”が毎回プラスチックモンスターにいたずらをして邪魔をする。最後にクスッと笑えるブラックユーモアも印象的だ。

コウスケ:プラスチックモンスターは社会や環境への意識が高く、常識のあるキャラクター。“アイツ”はいたずら好きで、プラスチックモンスターがやることを邪魔しがち。無意識に周りを困らせますが、どこか憎めないヤツという設定です。互いに違う常識や価値観を持っているのでぶつかりますが、“アイツ”が持つ価値観から見えるモノも伝えたくて、2個にしました。ストーリーに関しては、僕のベースに対してマリエさんから「もっとハードに表現してもいいんじゃない?」とフィードバックがあり、自分が守りに入っていることに気付かされます(笑)。

マリエ:意識していないと凝り固まって“当たり前”にとらわれてしまうので、毎回自分に「やりたいようにやっていいんだ」と言い聞かせています。ファッションだからこそ表現できるシュールさ、シニカルさ、ブラックジョークを詰めこまないとつまらないので、その点は意識しています。4コマを作るたびに学びがありますね。

WWD:キャラクターの見た目もユニークだ。太平洋を漂うプラスチックごみからできたモンスターだが、こだわったポイントは?

ダンクウェル:マリエさんの「社会や環境問題をもっと世の中に伝えたい」という要望を基にイメージしました。プラスチックモンスターはビニール袋をかぶっており、両耳はそれぞれ波と葉っぱでできています。ビニール袋で自然が覆われているイメージですね。足にはギプスをはめていて少し痛々しいけれど、クラシックなイメージに仕上げました。相方の“アイツ”は全身マントで覆われています。顔のサイドから出ているのは髪の毛ですが、コウスケさんのドレッドヘアを無意識に反映したのかも(笑)。描くときは、どのコマを切り取ってもTシャツやインテリアとなり得るくらいアートとして成立するようこだわっています。一方で、見る人に受け入れられないと意味がないので、キャッチーさは念頭に置いていますね。

WWD:4コマ漫画を通じて、自身の意識にも変化はあった?

コウスケ:マリエさんを見ていると自分もアンテナ広げなくちゃと思います。オーガニックは質だけでなく、農薬による子どもへの健康被害の軽減というメリットにもつながります。そんな連鎖は調べないと分からない。活動を通じて、自身も勉強しています。

ダンクウェル:サステナブルに関しては4コマ漫画を通じて学んでいる段階ですが、気付くことが大切だなと。先日インスタグラムに、海を漂うカラフルなプラスチックごみの写真に虹の絵文字をつけて「きれい」と投稿している人がいたんです。昔なら「なるほど、きれいだな」と思っていたかもしれませんが、今は「そう感じるんだ」と違和感を覚えます。自然と自分の意識が変わっていたことに気付きました。そんな人が増えたらと思います。

WWD:今後の「プラスチックモンスター」の計画は?

マリエ:3月にイベントを予定しています。プラスチックモンスターの認知度を上げてファッションと融合させる取り組みで、オリジナルTシャツなどを発売します。プラスチックモンスターがこの世界に生まれたきっかけをストーリーで見せたいなんて話もしています。「サステナブルって楽しいものなんだ」「エンターテインメントなんだ」と思ってもらえたらうれしいですね。そして、このキャラクターに惚れていただけたら。見る人にどう伝わるか楽しみです。

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