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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド コロナ時代の海外出張 パリ、東京、ニューヨークを回った実体験

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載も第16回。“You’d Better Be Handsome”では、トレンドに敏感なレイチェル(Rachel)も加わって、ニューヨークのトレンドや新常識について毎回トーク。今回は、新型コロナの影響により、国を越えての移動が厳しい中での海外出張を終えてきたメイが体験談をシェア。12月に東京、パリを回ってニューヨークへ移動する中で見たこと感じたこと、各都市の実情と、海外出張のニューノーマルとは?

スティービー:今日の話題はなんと言っても、メイの海外出張だね。ホリデー直前、ちょっと心配だったけど、実際のところどうだった?

メイ:正直、今の時期に海外出張って後ろめたいというか、大きな声では言わないようにしていたんだけど、実際3都市回ってみていろいろ見えた。これも感染せずに無事に戻ってこられたから言えることだけど。

レイチェル:それにしてもメイが出発した直後に、それまでは「Go To トラベルキャンペーン」を実施していた東京での感染者も徐々に増えていき、パリに到着したときはまだロックダウン中だったし、ニューヨークに戻ってくる直前にはイギリスで感染力が強いという変異種コロナが発表されて、ヨーロッパからアメリカに入ってくるのがさらに厳しくなったり。いろんな意味で、ギリギリセーフで戻ってきた感じよね。

ノーマル過ぎて、不思議な東京

メイ:今回は数年前から準備してきたビューティブランドのデビューキャンペーン撮影がパリであるというのと、東京でも新事業のプレゼンテーションがあったので、ギリギリまで悩んだけど行くことに決めた。いくらZoomでシェアしてくれると言われても、6日間分のスチールとビデオをZoomで確認するって想像ができなかったし。

レイチェル:時差もあるしね。パリ時間に合わすのは難しい。

メイ:いまだにアメリカからヨーロッパには直接飛べないから、日本を経由したことで行けたというわけ。日本にとってアメリカは、「上陸拒否の対象地域」に指定されているから、受け入れる企業から「誓約書」と「本邦活動計画書」を書いてもらい、出国・出域前72時間以内に、出発国・地域でテストを受けて「陰性」であることを証明する「検査証明」を取得することを条件に、入国の許可が出たので行けたの。

スティービー:どちらにしても成田空港では、新型コロナの検査を全員受けさせられるんだよね?

メイ:そうそう。ジョン・F・ケネディ国際空港(以下、JFK)からANAの成田行きに乗ったら、全部で10人ちょっとくらいしか客がいなかったという印象。スタッフの方が多かったかも?私も昨年の3月以降飛行機に乗っていなかったから、機内でうつったらどうしよう?という心配はあったけれど、搭乗してすぐに映し出された映像で、3分に1回空気が全部入れ替わるという説明があって、ガラガラの機内でその頻度で空気が入れ替わるなら地上にいるより安全?と一安心。

レイチェル:JFKはどんな感じだった?

メイ:ガラガラ。店はダンキン・ドーナツと雑誌屋、あとは一部の免税店しか営業してないし、航空会社のラウンジも閉まっていて。

スティービー:機内は、ほぼ貸し切りだったってこと?

メイ:周りに人の気配もないし、ある意味ぜいたくなフライトだった。ただ最近ニューヨークから東京に飛んだ友人に、一刻も早く飛行機から降りてテストを受けないと、空港を出るのに時間がかかると言われていたので、降りる準備を早々にしていたら、乗り換えのお客さまからとアナウンスがあって。結局、成田で降りる私は機内で30分近く待つことに。

レイチェル:そんなに少ない人数なのに、細かく分けるんだね。

メイ:そこまではすごく気をつけているんだな、という印象だった。飛行機を降りたら、一列に並んでテスト会場みたいな所まで連れていかれ、そこに並ぶ折り畳み椅子に座って順番を待つという仕組み。ただ、その折り畳み椅子の間隔が50cmくらいで、とっても近い気がした。

スティービー:昨年3月から他人とは6フィート(約180cm)の間隔を空けるように、徹底的にたたき込まれたからね、ニューヨークでは。

レイチェル:テストは唾液って聞いているけどどうやるの?ニューヨークでは、鼻の中に綿棒を突っ込まれる形式しかないから。

メイ:私も最初心配だったけど、渡された容器の目盛りに沿ってブースみたいなところで唾液を入れ、それを担当者に渡して次のコーナーに移動。

レイチェル:全部でどれくらい時間がかかった?

メイ:時差のせいか、飛行場という不思議な空間のせいか、あまり時間の記憶がないんだけど、2時間弱くらいかな?最初の折り畳み椅子で30分くらい。そこで機内で配られた書類にきちんと記入しているかを数人のスタッフに確認され、その後受付でその書類を渡し、同時にテスト容器を受け取り、移動して唾液を入れた容器を違うスタッフに渡してさらに移動、今度は列に並び、パスポートやら飛行場からの交通手段を聞かれて席番を渡される。それを持って、その席に座って約30分、自分の席番が呼ばれたら次の受付に進み、そこでちょっと待つと結果を教えてくれる。陰性だったらそのまま出ていいというプロセス。

スティービー:チェックポイントが多いね。ちなみに陽性だったらしばらく隔離されるんだよね?

メイ:指定されるホテルとかで、2週間の隔離。大丈夫だとは思っていたけどドキドキした。

スティービー:とにかく第一関門をパスできてよかった。久々の東京はどうだった?

メイ:用事のあるとき以外は、ホテルにこもっていた。人が全体的に少ない印象ではあったけれど、それでもニューヨークに比べたら今までと大きく変わらないというか。もちろんみんなマスクはしているし、ホテルに入るときも自動検温器があったりするんだけど、ホテルのバーもプラスチックシールドが貼られているとはいえ、屋内で営業していて、人数制限もないのか結構混んでいたりするし。

レイチェル:バーなんて、ニューヨークでは春からほぼずっと屋外でしか営業していないからどうだったか思い出せないくらい。

メイ:東京は細かくはいろいろと変わったと思うけど、短期滞在者の私の目にはコロナの前と同じで、ただいろんな所にプラスチックが貼られていて、これまで以上に清潔にしている、ってことくらいかな?そういえばホテルのスタッフもなんだか距離が近くて、ちょっと怖くなった。マスクしているから聞こえづらいのかもしれないし、みんな親切心だとは思うけど、もう少し離れていようよと思った。日本で距離感が近いと感じたのは初めてのこと。

スティービー:日本は「Go To トラベル」という制度を政府が設けて、日本人の国内旅行を推奨してるんだよね?

メイ:さすがに感染者がどんどん増えて、現在は停止しているけど。だから東京のホテルもギリギリだったとはいえ、こんなご時世に満室の所が多くてびっくり。高い所の方がポイントを多くもらえると聞いたよ。

レイチェル:世界中でみんなが移動を制限している中で大胆な政策よね?感染者の数がアメリカやフランスとはケタ違いっていうのはもちろんあると思うけど。

メイ:今回日本に滞在していたのは数日だけだったけど、その間に友人の感染が発覚。でもそれは彼が進んでテストを受けたから分かったこと。症状も軽かったみたいだし、ちょっと発熱したくらいでは日本ではテストを受けに行かない人もいるのかも、という印象を受けた。ただ1人感染者が出ると、保健所がフォローして、濃厚接触者はみんなテストを受けないといけないらしい。結局、彼の家族は全員感染していたので、ホテルに隔離されなくて済んだんだけどね。

レイチェル:ってことは、本当はもっともっと感染者がいるってことよね?

スティービー:話を聞いているとそういうふうに聞こえた。隔離っていうのは、アメリカにはないよね?個人的にホテルで隔離している人はいたとしても。ただ周りの友人知人も、症状がなくても、複数の人に会ったとか、室内での食事会に行く前には、マナーとしてテストを受けている。友人のスタイリストも、父親に会いに行く前には、必ずテストを受けているから、月1、2のペースで受けている人も少なくない。

レイチェル:ただ日本ではコロナのテストを受ける料金が高いって聞いている。ニューヨークは基本的には、無料で受けられるからそこは大きいかも。

メイ:私が調べたときは、安い所で2万5000円くらい。ただ安い所はアポがいっぱいで飛び込みは無理。あとは3万5000円くらいが相場で、英語での翻訳料が1万円追加でかかる。

ロックダウン下で、ツーリストのいないパリを体験

メイ:パリへは、羽田から出発。羽田も店がほとんど閉まっていて、シーンとしていた。シャルル・ド・ゴール国際空港行きのJALはJFK-成田間よりも人がたくさん乗っていたという印象。日本人は、フランスに特に何の書類やテスト証明もなく入れるからかな。さすがに観光客風の人たちは見かけなかったけど。

スティービー:で、シャルル・ド・ゴールはどうだった?すんなり入れた?

メイ:ここでも滞在先などを記入した紙をパスポートと提出したけれど、すっと入れてほっとした。空港は結構混んでいてびっくり。パリはそのころロックダウンだったのに。

レイチェル:パリのロックダウンって、そもそもどの程度の規制があるの?

メイ:去年の3、4月のころのロックダウンとは違って、みんな基本的に仕事にも学校にも行っていた。ただ飲食店は全てテイクアウトのみ。店先でワインやチーズとか、ストックを売っているようなレストランもあったし、完全に閉めているレストランもたくさんあった。

スティーブン:ホテルもけっこう閉まっていると聞いたけど?

メイ:大型ホテルもブティックホテルも閉まっている所がたくさんあったのは事実。なんといっても、観光客は基本的にゼロなので。私が泊まっていたホテルも、一階にバーレストランがあるのだけれど、バーでは飲み物を飲むことも禁止で、テイクアウト用に入れてもらった紅茶をその場で飲もうとしたら、すごい勢いで断られた。結構厳しく罰金が取られるんだろうなと思いながら、部屋に持って上がって飲んだよ。

レイチェル:でもビストロやカフェが開いていないパリって想像できないんだけど。

メイ:私も今回は最初から食には期待していなかったけど、さすがパリ、そこそこのレベルのテイクアウトがいろいろあって困りはしなかった。

スティービー:で、パリジャンはちゃんとマスクとか着けているの?それも想像できないけど。

メイ:パリではマスクをしていないと罰金らしい。子どもでも罰金を取られるらしく、たまにマスクがズレてる人はいたけど、みんなちゃんとしていた。撮影現場でもみんなちゃんと着用してくれていたし。

レイチェル:ケータリングとかは?

メイ:ニューヨークと同様、ランチボックスみたいな感じで、最初から取り分けられていた。前菜の小さなボックス、メインコースのボックス、それにデザートのボックス、みたいな感じで。寂しいけれど、マスクを外さないと食べられないので、私はチームからは離れてご飯はいただいていたけど。

スティービー:ブティックとかデパートとかは?

メイ:サントノーレ辺りのブティック、デパートは普通に営業していた。サントノーレはほとんど人がいなかったけど、「エルメス(HERMES)」の本店はいつもほどではないものの、そこそこ混んでいた。観光客はいないはずなのに、この人たちは一体どこから来たのかなって。でも店の人も私のニューヨークのアドレスを見て驚いていたし。やっぱりアメリカ人は最近いないらしい。

レイチェル:ロックダウンとはいえ、出掛けてもいいってことなのね?

メイ:毎回3時間まで出掛けられるんだけど、そのたびにアプリかウェブで基本的な情報を記入して送信し、その受領書みたいなのを持ち歩くというルール。ただ12月15日からは、ロックダウンは解除され、その代わり20時以降は許可証がないと出歩けないという外出禁止令に変わった。

スティービー:12月の半ばからヨーロッパ、特にイギリスはどんどん悪化していったし、アメリカも死者が1日3000人台とかどんどん増えるし、日本でもまた緊急事態宣言と言っているし、ワクチンができたとはいえ、コロナに関して一寸先は闇だね。

メイ:パリでは仕事をしたり、ホテルで食事をしたりする分には、特に不便な感じはしなかった。むしろクリスマス前だったからか、活気さえ感じられた。ただ今回泊まっていたエリアは、スタジオに徒歩で行けることを条件に選んだこともあって、もっと庶民的なエリアだったからかも。

レイチェル:それにしても感染せずにニューヨークに帰ってこられて何より。

スティービー:ニューヨークに戻ってきてからも、ホテルで隔離されていたんだもんね?

メイ:自主隔離だけどね。もし感染していて、家族にうつしたら大変だからね。クリスマスイブの朝に前々から予約を入れていたラピッド検査を受け、15分後に陰性の結果をもらって、自宅に帰ったというわけ。無事にクリスマスを迎えられたことが何よりのギフトだった。

スティービー:実際に感染するのも怖いけど、テストを何回も受けないといけないっていうのがやっぱり面倒だよね。

メイ:いろいろ細かく考えなくても、2021年はもっと気軽に旅に出られるようになるといいね。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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