ファッション

森星の「今日からできるサステナビリティ」 ポップアップストアで伝える“都会のなかの循環のかたち”

 モデルの森星が手掛ける新プロジェクト「シティ シェド(CITY SHED)」のポップアップストアが12月16日に渋谷スクランブルスクエア4階にオープンした。「都会のなかの循環のかたち」をテーマにした同ストアは、内装をキッチン、ベッドルーム、メディテーションルーム、バルコニーの4部屋に分けて構成。心地よく、楽しい気持ちになる秘密基地のような空間に、彼女の愛用する約50のアイテムをセレクトした。モデルとしての活躍は広く知られているが、事業者としてプロジェクトの立ち上げから商品MD、プロモーション、空間デザインまで の指揮を取るのは初めての試みだ。「シティ シェド」発足の背景から、サステナブルな生活へと意識が変わるきっかけ、具体的なアクションに至るまで、日々の生活に取り入れられそうなヒントを、全3回にわたりお届けする。

WWD:「シティ シェド」立ち上げのきっかけは?

森星(以下、森):さまざまなレイヤーがありますが、昔からいつかモノづくりに携わりたいと思っていました。モデルの仕事はすでに完成されたモノを纏って最大限に美しく表現するのがミッションなので、無駄が出ないモノづくりについて考えたり、世の中にないモノを探し出したりすることは新しい挑戦で、不安もありました。でもモデルとしてさまざまな国に行くチャンスが増えて、刺激的なモノを見て、触れて、感じたことで、自分が何を着て、食すべきか考え直すきっかけを持てました。“何を表現するか”以前に、“何が好きか”を見極める必要があるとも感じました。28歳の自分が、何を着ると心地よくて、楽しいのか――それをポップアップストアで切り取ることで、このチャレンジをスタートさせたいと思いました。

WWD:「シティ シェド」の名前の由来は?

森:“男性の趣味部屋”を表す“MAN CAVE(男の洞窟)”の女性版として海外で浸透しつつある“SHE SHED(彼女の小屋)”にヒントを得ました。DIYをしたり、部屋に絵を描く道具をそろえてみたりといった、好きなものを詰め込んだ空間の発想が、プロジェクトのイメージにぴったりだと思いました。でも“SHE SHED”では女性だけに限定されてしまう。性別、人種、年齢を超えた、もっと広い人たちに届くように“CITY SHED”という造語が完成しました。

WWD:テーマの「都会のなかの循環のかたち」とは?

森:私の生い立ちを振り返ると、都会で生まれ育ちながらも、母親は屋上で菜園をしたり、烏骨鶏を飼ったり、養蜂をしたりと、コンクリートジャングルの中でどう命を作り出すかを楽しんでいました。幼いころはそういう生活を正直ダサいと感じていたけれど、大人になるにつれてその豊かさを取り入れたいと感じるようになりました。今では私自身、生ごみを堆肥に換えるコンポストを使いはじめ、家庭菜園も行っています。ポップアップストアでも、そんな命の“循環”を身近に感じられる提案をしています。

WWD:それぞれの空間に込めたこだわりは?

森:ポップアップストアでは私の家を再現しようと思い、まず「メディテーションルーム」として畳スペースを作りました。実際に畳に座ったり、撮影したりすることもできます。空間のライティングは、光のアーティストのニジミナトさんに、生け花は華道家の渡来徹さんに依頼しました。畳や“禅”といった日本のクラシックなイメージを、自分なりの感覚で解釈したので、若い人たちが伝統文化や工藝に興味を持つきっかけになればうれしいです。イグサの香りや光のゆらぎからも、ぜひ癒しを感じてほしい。

WWD:その他の部屋は?

森:「バルコニー」は、装飾を園芸店のソルソファーム(SOLSO FARM)に依頼して、コンポストやガーデニングツールを販売します。日常生活の中で、分別した生ゴミがその後どうなるのかまでを気にかけるのは難しいけれど、コンポストという“小宇宙”を持っているとそれが想像しやすくなるんです。生ごみを細かく切らずに入れると分解ではなく腐敗に進んだり、でもそこに落ち葉をいれると水分量が整ったり。そういう経験を通じて植物や環境への理解が深まればいいなと。

「ベッドルーム」は、インテリアをビンテージショップ「セローテ アンティークス(CEROTE ANTIQUES)」に依頼し、同店のライトやワイングラス、コーヒー、棚なども販売しています。またオーストラリアのライフスタイルブランド「スク(SUKU)」とコラボレーションしたパジャマやガウンも取り扱います。染めから縫製まですべて職人のハンドメイドなのも気に入っています。「スク」の代表的な絞り染めの柄を、日本を感じる“苔、小豆・素(しろ)”のオリジナルの3色で表現しました。

「キッチン」では、蜜蝋やココナッツオイルが原料のラップ、繰り返し使えるシリコン製
のスタッシャ―、ヴィーガンクッキーなどを販売しています。今後はスーパーフードとしても注目を集めているバターオイル“ギー”の販売も予定しており、この商品にはアユールヴェーダに興味のあった母が、私が幼い頃から体調が優れないとスプーン1杯分を飲ませてくれて、体調が改善していた思い出があります。自然のパワーを取り入れることが可能な商品を紹介していきたいと思います。

WWD:どこを取ってもこだわりとエピソードが満載だ。一方で、事業者として初めてプロジェクトに携わった感想は?

森:決断することの大変さを実感しています。モデルの仕事では、現場でムードをくみ取り「こうやって自分を演出しよう」という決断はあるけれど、今回のプロジェクトでは、仕入れから商品の配置、プロモーション制作において、また別の種類の決断を同時進行で迫られる。さらに、それらをブロックのように積み上げていく過程で「やっぱり違う」と思うことがあれば、きちんと伝えることも重要。「最初に言ったことを貫かなければ」という変なエゴで周囲の顔色をうかがうと後でもっと迷惑がかかるし、私がやる意味もなくなってしまう。勇気がいるけれど、状況に応じて変化したり、ときにはキャンセルの指示を出すことも必要だと学びました。

WWD:会期が終われば、もちろん売り上げのフィードバックもある。

森:プロジェクトには、私の視点とマーケティングの視点のどちらも大切。ただビジネスに寄りすぎると“循環”のテーマとかけ離れていく矛盾があり、折り合いをつけるのが難しかったです。ポップアップの受け取られ方は三者三様だと思うけれど、作ったモノには責任を持たなければいけない。それを夢で見るほど考え込んでしまい、約3週間も右目の痙攣が続きました(笑)。

WWD:プロジェクトを通して何を伝えていきたい?

森:地球環境が深刻な状況にあることはさまざまなメディアでフォーカスされていますが、そこばかりを見聞きしているとついネガティブな思考になってしまいます。極論を言うと、生きていることすらムダに感じて、自分一人では何も変わらない気もしてくる。環境や自然を守りたいという気持ちを自分自身が肯定できて、かつファッションの楽しさやおしゃれさ、ときめきを感じるような提案ができるか。そんなポジティブな物事の捉え方を発信するのが私の役割の1つだと感じています。

とはいえ、まだまだ日々勉強中です。実践することで自分の言葉に責任と信ぴょう性を持ち、自信を持って“サークルオブライフ”を発信していきたいです。

■ポップアップショップ「シティ シェド」
日程:12月16日〜1月5日
場所:渋谷スクランブルスクエア 4F スペース4
住所:東京都渋谷区渋谷2-24-12
営業時間:11:00〜21:00
オンラインにて特設サイトがオープン中

※次回は「サステナブルな生活へと意識が変わるきっかけ」をお届け

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

ファッション&ビューティメディア大特集 一緒に働く人も目指す人も必読!

11月29日発売の「WWDJAPAN」は、毎年恒例のメディア特集です。今週号には10社、14媒体、そして総勢32人の個性豊かな編集者が登場します。特集は、コロナ禍で編集長に就任&復帰した「25ans」と「MEN’S EX」そして「ハニカム(HONEYEE.COM)」編集長の座談会からスタート。「おめでとう」より「大変だね」と言われることが多かった編集長は、コロナが背中を押したかもしれない新事業への…

詳細/購入はこちら