ファッション

「カラー」がパリコレに帰ってきた 超実験的なムービーに込めたデザイナーの思いとは?

 2017-18年秋冬を最後にパリから離れていた「カラー(KOLOR)」が、5シーズンぶりにパリ・メンズに帰ってきた。パリへの帰還を飾る2021年春夏メンズ・コレクションは、デジタルをプラットフォームとするプレゼンテーションでの発表となった。26台のiPhoneを駆使して360度からルックを切り取る全く新しい映像で、ブランド設立から15年以上経過しても攻める姿勢を崩さない阿部潤一デザイナーの強い意志を伝えた。

 取材班は7月上旬、都内のスタジオで行われた同撮影のバックステージに潜入していた。その映像とともに、同コレクションに込められた阿部デザイナーの思いを探る。

スマートフォンを通じて過去のコレクションと現代の空気をつなぐ

 今シーズンは「『2011年秋冬コレクションの世界観を、現在の空気で表現したらどうなるのか?』という設定でコレクションを製作した」と語る阿部デザイナー。当時はスマートフォンが登場したばかりで、SNSも今ほど浸透していなかった。そんな過去と現在社会をつなぐ表現として、スマートフォンによる撮影を考案したのだろう。

 ただスマートフォンで撮影するだけでは面白くない。そこで、円型の装置に26台のiPhoneを搭載し、360度撮影できる機材を特注。縦方向でルックを切り取り、靴の裏から頭のてっぺんまでを見せた。誰もが驚いたこの手法は、単に奇をてらったわけではなかった。「ランウエイショーでは真上と真下からルックを見ることは出来ない。それを収めることで、ビジュアルやムービーで表現する意味が更に増すのではと考えた」。

 実験的な表現は今シーズンに限ったことではない。パリ・メンズから離れ、ルックのみで発表したシーズンでも、街中でのシューティングやコラージュなどほかにない表現に挑戦していた。「僕たちは服を作っている。アイテムのデイテールや空気感を感じることにおいては、人間が着ている状態を目の前で見られるランウエイショー以上のものはないかもしれない。しかし、プレタポルテのランウエイは1960年代から変わっていない。何か違う形で表現ができないかと数シーズン試行錯誤してきた。今回もその延長で、僕らの伝えたい空気や気分を発信したつもりだ」。

ユース感と高い技術が融合する新たなクリエイション

 コレクションの発表手段だけでなく、そのクリエイションも年々進化している。ナイロンやキュプラといった独特の素材使いでクラシックなムードに新鮮さを加えるクリエイションが人気だが、ここ数年はキャッチーなモチーフ使いで若者のファンも増やしている。今シーズンも「コカ・コーラ(COCA-COLA)」のロゴをオマージュした“CONCLEAT”というレタープリントや、ブランドタグを無数に複製した柄のアイテムを用意した。上質な素材と確かな技術で作られるから、ユース感あるアイテムでも大人に受け入れられる。そのバランスは、長い経験を重ねる阿部デザイナーだからこそ実現するものだ。

 年齢を重ねても立ち止まらず、常にチャレンジングな姿勢を貫く。そこから新たなクリエイションと表現が生まれるーーこれが今の「カラー」の強さだ。今シーズンでその凄みを存分に見せつけた阿部デザイナーは、今後どんなコレクションを見せてくれるのか。パリ・メンズの“第2幕”に期待が高まる。

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