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元ライフスタイルメディア社長がフェムテック企業「メデリ」を立ち上げ 自身の不妊治療の経験から思いを語る

 女性向けライフスタイルメディアである4MEEEの社長を務めていた坂梨亜里咲氏が、社長退任後にフェムテック事業を行うメデリ(MEDERI)を立ち上げた。3月3日には、医師や専門家の監修のもとに妊娠や出産に関わるサービスを展開するウーマンウエルネスブランド「ウブ(UBU)」をスタートさせ、子どもを望む女性に向けたサプリメントとコーチングカードが届く定期ボックス「ウブ サプリメント」を発売した。発売に先立って行ったクラウドファンディングでは、目標額を超える総額260万円以上を集めた。

 同社の立ち上げのきっかは、坂梨氏の不妊治療の経験だった。20代後半に妊娠しにくい体だということが判明して、30歳の現在まで不妊治療に多くの時間を費やし、さまざまな問題を抱えながら自身のライフステージや思いと向き合ってきた。「不妊に関する日本人の知識はとても低い。産みたいのに産めない人がたくさんいるのではないでしょうか。私の経験は無駄なことではなく、一人でも多くの女性を自分が望む未来に導きたい」と語る坂梨代表に、フェムテック事業をスタートさせたきっかけや今後の展望を聞いた。

WWD:メディアの運営から、なぜフェムテック事業をスタートさせようと思った?

坂梨亜里咲(以下、坂梨):前職は女性向けライフスタイルメディアの4MEEEで社長を務めていたんですが、自分がこのメディアのターゲットではなくなったなと感じてから、ほかに熱中できる世界を作りたいと考えていました。そこで着目したのが自身の不妊治療の経験です。私は結婚を機に受けたブライダルチェックで妊娠にくい体だということ知り、人生最大の悲しみを経験しました。それから多くのお金と時間を費やし、不妊治療を3年間続けてきました。私の症状は重く、もっと早く気付ければよかったという後悔や経験から、フェムテック事業をスタートさせることを決意しました。

社名は、わたし(I)を愛でる(MEDERU)を組み合わせて“メデリ(MEDERI)”にしました。多忙な20代、30代の女性には自分を愛でる時間や自分と向き合う時間が必要だと感じたからです。

WWD:第一弾プロジェクトの「ウブ(UBU)」はどういったブランド?

坂梨:「ウブ」は医師や専門家が監修するウーマンウェルネスブランド。初めての経験の“初(うぶ)”や、産むことの“産(うぶ)”をブランド名に込めました。妊娠、出産のジャンルを担っていきたいと考えています。最初は妊よう力(妊娠して、出産することができる能力)を知るチェックキットに着手したのですが、さまざまなハードルがあり、手こずっていました。そんな折に取締役から「もう少し一般の人が日常に取り入れやすいものでもいいんじゃない?」とアドバイスを受け、第一弾はサプリメントになりました。思い返してみれば、私が妊娠準備を始めたときに真っ先に取り入れたのもサプリメントでした。

WWD:サプリメントはどういった商品?

坂梨:医師、助産師、管理栄養士の協力を得て作りました。サプリメントは実感を得るためのものではなく、赤ちゃんを迎え入れるための体内環境を整えるための葉酸、ビタミンD、ラクトフェリンを含んだものです。毎月、妊娠や出産にまつわる知識ブックと一緒に届けます。さらに、未婚女性、既婚女性、パートナーに向けたセルフコーチングカードも作り、知識を取り入れるためのサポートも行います。未来を届けている感覚ですね。まだ具体的に妊娠を考えていない人にも、自身の体と向き合うきっかけとして飲んでいただきたいです。

WWD:最初に取り組んだチェックキットの発売予定は?

坂梨:チェックキットの発売は5月を予定しています。このチェックキットは膣内フローラをチェックするもので、子宮や膣内にはたくさんの細菌が存在し、良性な善玉菌が多いと妊娠率が高いことがわかっています。その菌の数と生活習慣などのアンケート結果と組み合わせ、妊よう力を診断します。現状は解析料金が高くなるため販売価格も高価ですが、そこをいかに安くできるかが今の課題です。

この検査は妊娠準備の初歩向けのキットになっていて、妊よう力の理解や自分の体と向き合うきっかけにしてほしいと思っています。まずは関心を持っていただいて、クリニックでさらに細かいチェックを受けてもらいたい。不妊にはさまざまな要因があり、膣内フローラだけではありませんが、自分の体を知ることの第一歩にしてほしいと考えています。

WWD:目標を超える額を集めて注目の高さがうかがえるが、今回クラウドファンディングを行った理由は?

坂梨:クラウドファンディングはPRやニーズの調査のほか、ブランドの思いを知ってもらうために実施しました。「ウブ」に共感してくれる人や企業を募集することも目的の一つでした。

WWD:メディアを運営していた経験があるが、情報発信はどう行っていく?

坂梨:4月1日に妊娠・出産にまつわる知識情報を発信するウェブメディア「ウブ プラス」をオープンしました。著名人へのインタビューを中心にコンテンツを構成し、20〜30代女性がこれから直面する初めてのライフイベントに寄り添うメディアとして情報を発信していきます。

WWD:今後はどういった展開を考えている?

坂梨:タイミング法の不妊治療、パートナーと性交渉をしている人や不妊に向けたプロダクトを製作していきたいです。ゆくゆくは手ごろな費用で卵子凍結をできるスキームを行っていきたいなと思っています。また、企業のモチベーション管理システムへの導入を視野に入れています。しかし、企業にヒアリングをしてみると「辞めた人の卵子はどうするんですか?」「卵子凍結は意外に高いからそれを福利厚生にするのは難しい」など壁があるなと感じました。なので、まずは一般消費者向けに展開し、ゆくゆくは企業向けのサービスも含めて「ウブ」「メデリ」を確立していきたい。活動に共感してくださるフレンドシップカンパニーも募集していきたいです。

日本人の不妊に関する知識はとてもに低い。産みたいのに産めない人がたくさんいるのではないでしょうか。人生の判断軸になるものを20代、30代の女性に提供できたらと思っています。私の経験は無駄なことではなく、一人でも多くの女性をその人が望む未来に導きたいと思っています。

WWD:新型コロナウイルスが不妊治療にも影響を与えていると聞くが。

坂梨:4月1日に日本生殖医学会が不妊治療の延期を患者に提案するよう推奨する声明文を発表しました。私自身、昨年は治療をペースダウンしていましたが、今年の夏から本格的な治療を再開しようと考えていた矢先のことでした。 先日かかりつけ医と話したところ、新型コロナのことが要因で踏み込んだ治療がしばらくできなくなりました。 ショックで戸惑いもありましたが、母体から胎児への感染の可能性があるかもしれないと思うと恐ろしく、同時に納得もしたというのが本音です。

このような緊急事態を経験しあらためて感じたのは、自分の意向と合ったかかりつけ医を見つけることの大切さです。そして、これから妊娠準備においても自宅でできるケアが重要となること。私自身、不妊治療を受ける者のひとりとして、オンライン診療、妊よう力にまつわるチェックキット、そしてそれぞれを掛け合わせた取り組みが鍵となるのではと考えています。

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