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「アンリアレイジ」森永邦彦が語る「LVMHプライズ」効果 「フェンディ」ともコラボ、ドバイ万博では制服デザイン

 「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦は、2019年度の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(以下、LVMHプライズ)」ファイナリスト選出を経て、表現の場をいっそう広げている。20年1月にミラノで開かれた20-21年秋冬メンズ・ファッション・ウイークで、「フェンディ(FENDI)」とコラボレーションしたことは周知の通り。「『LVMHプライズ』以降、コラボなどの依頼は大幅に増えている」と森永。現在もいくつかのプロジェクトが進行中といい、「LVMHプライズ」とは直結しないものの、10月からアラブ首長国連邦で開催予定のドバイ万博日本館の制服デザインも手掛ける。森永に「LVMHプライズ」後の変化や、ビジネスの状況を聞いた。

WWD:まずはドバイ万博日本館の制服の話から。同万博は10月20日~21年4月10日に開催予定だが、制服はどのようなデザインか。

森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナー(以下、森永):中東では初開催となる万博であり、異なる文化や価値観を境界を超えてつなぐことを掲げている。「アンリアレイジ」がこれまでやってきたことも、日常と非日常という対極を服の上でつないでいくこと。そうした考えから、昨春行われた公募に参加した。プレゼンではいくつかの軸を立てたが、1つ目の軸は「人と人をつなぐ」こと。普通、制服は男女で異なるものだが、男女を同一デザインにし、細かなサイズ分けもあえて設けず、性別や老若などによる体形差を超えることを目指している。2つ目のテーマは、「和と洋をつなぐ」こと。サイズを設けず、服を体に合わせていくという考え方は非常に和服的でもある。ブレザーは、地球のような球体をボディにして作った。もちろん人間の体にはフィットしないが、ボタンをどこまで留めるかでシルエットが変えられ、それゆえあらゆる体に合わせられる。球体というモチーフは、日本館が掲げる“地球交差点”というコンセプトにも合う。

WWD:球体のボディは、「アンリアレイジ」09年春夏の“〇△□”で取り上げたアイデア。色が白と黒のみというのも、15年春夏の“SHADOW”に通ずる。

森永:色については、中東には男性の民族衣装として白いカンドゥーラ、女性には黒いアバヤがある。その男女の別をなくし、一人のスタイリングの中に白と黒を取り入れるという考え方だ。ブレザーやバッグ、スニーカーには、16年春夏の“REFLECTION”で取り上げた再帰性反射の技術を採用している。同技術は事故防止用のリフレクターなどに使われているが、見る人の置かれた環境や光の入射角などで、見える色が変わるというもの。つまり、特定の色を持たない服だ。モチーフは丸や三角、四角を重ねた幾何学柄で、中東のアラベスク模様のようでもあり、同時に和柄のようにも見える。

WWD:スニーカーは「アシックス(ASICS)」、バッグは吉田カバンの「ポーター(PORTER)」という、「アンリアレイジ」でコラボレーションしている外部2社も巻き込んだ。

森永:説得して協力してもらった。男女で同じというのが制服のコンセプトなので、足元もパンプスではなくスニーカーを採用したのは大きなポイント。ベースになったスニーカーのモデルは“ゲルライト3”、バッグは「ポーター」の“ヘルメットバッグ”だ。今回制服をデザインするにあたって、1970年の大阪万博をリサーチしたが、"ヘルメットバッグ”は70年代に原型が生まれたモデルなのでこれを選んでいる。リサーチの一環で大阪の万博記念公園も訪ねた。太陽の塔などは半世紀を超えて残っていて、今見ても新しさがある。万博とは礎になるものだと思う。今回自分たちが作るものが、未来の中の記憶になっていくようにという思いで制服もデザインしている。素材は、協賛パートナーである東レの、再生ポリエステルなどサステナビリティに配慮した生地を使用している。

遠くに投げたアイデアを、
コラボで定着させる

WWD:「アンリアレイジ」では次々新しいことに挑戦し、今回のような外部の仕事やコラボでは、過去に挑戦したアイデアを編集し、ブラッシュアップするという形が定着してきた。

森永:「アンリアレイジ」で追いかけているのは非日常。それを追求し続ける中で、非日常がいつか日常になればいいなと思いながらやっている。制服は多くの人が実際に着るもの。今回ならば半年間着用することを通して、過去に取り上げてきたコンセプトや技術が、日常に定着していけばと思っている。それは、14年にスタートした「アンリアレイジ」のベーシックライン“アンシーズン(ANSEASON)”とも共通する考え方だ。僕は最初は(日常生活から)遠いところに球(アイデア)を投げる。(それゆえ、リアルじゃないなどと言われることもあるが)半年で消費されて終わるようなテーマではない。1月に発表した「フェンディ」とのコラボレーションも、アイデア自体は7年前の発表(13-14年秋冬の“COLOR”コレクション)を応用したものだ。

WWD:「LVMHプライズ」以降は、大御所ジャーナリストのスージー・メンケス(Suzy Menkes)がSNSに「アンリアレイジ」を投稿するなど、注目度が飛躍的に高まっている。ショー来場者も有力者が増えた。

森永:スージー(・メンケス)にとって「アンリアレイジ」は、“テクノロジーのブランド”というイメージが強かったようだが、今年1月に参加したピッティ・イマージネ・ウオモで、ブランドがテクノロジーとは別軸で立ち上げ時から追求しているパッチワークなどのアナログな要素も見てもらうことができた。それで、「テクノロジーとアナログ双方を追いかけている点が面白い」と言ってもらえた。「LVMHプライズ」のファイナリストに選ばれたことで、世界中から見られる存在になったと感じているし、コラボの話は増えている。今後も面白い話題を提供できそうなプロジェクトがいくつかある。

WWD:「LVMHプライズ」は、売り上げにはどのような影響をもたらしたか。

森永:03年の立ち上げ以来、売り上げは直近の1年間が最も伸びている。海外の卸先社数は15社前後から25社前後にまで増え、1店あたりの買い付け予算も伸びている。19年春夏、19-20年秋冬は東京でもショーを行ったことで、国内の卸先も改めて15社前後増えた。渋谷パルコに出店したことも大きい。

WWD:先日、パリで発表した20-21年秋冬は、“BLOCK”をテーマに、積み木のようにパーツを組み換えて楽しめる服を発表した。

森永:テクノロジーを打ち出すブランドというイメージがついているので、ブランドのベースにあるものは違う、テクノロジーはあくまで一つの要素だということを示していきたい。それで19-20年秋冬からは、日常見ている服を視点を変えて見てみる、というクリエイションを続けている。20-21年秋冬の“BLOCK”は、子どもが生まれた友人夫妻に、積み木を布でくるんだおもちゃをプレゼントしたことがきっかけ。「これが服になったらかわいいな」と漠然と思った。アウターは15型しか作っていないが、パーツを組み換えることによって50型近くのアウターを作ることができる。(それをサステナブルだと捉えてもらうこともできるが)着用者の側に着方を考える余地があるというのがいい。なるべく少ない型数で勝負ができるということは、品番を絞ることができて商売としても効率がいい。

WWD:新型コロナウイルスの影響が国内外に広がり、アパレル業界への打撃も大きい。

森永:東コレ時期に合わせて計画していたイベントなどは残念だが中止した。国内での展示会も、いつもよりは規模を縮小して行う予定だ。東日本大震災直後に東コレが中止となった時には、使用電力をなるべく抑えてショーを実施した。ショーを行うことで経済を回し、業界に還元することができたと思う。ウイルスの問題はそれとは状況が違うのでまた難しいが、自分たちができることを進めていきたい。

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