ファッション

シャネルが気候変動対策に本腰 25年までに100%再生可能エネルギーへ

 シャネル(CHANEL)は気候変動に関する取り組みとして、「シャネル ミッション 1.5(Chanel Mission 1.5以下、ミッション)」を3月10日に立ち上げた。これは2015年に採択された気候変動の抑制に対する国際的な枠組みであるパリ協定の目標値に則ったもので、名称の“1.5”は同協定が定めた「世界の平均気温の上昇を1.5度未満に抑える努力をする」という条項に基づいている。

 このミッションは二酸化炭素排出量の削減、25年までに再生可能エネルギーに100%切り替えること、排出した二酸化炭素の相殺、気候変動に関する取り組みへの投資や支援という4つの柱で構成されており、調達やサプライチェーンなどの生産面はもちろん、小売りや物流、コレクションのショーなどにも適用される。

 アンドレア・ダバック(Andrea d’Avack)=シャネル チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)は、「環境問題には以前から取り組んできたが、ここ2年はさらに高い目標を掲げている。また自社で設定した目標だけではなく、協定などで課せられている目標もしっかり達成していきたい。中でも二酸化炭素排出量の削減は非常に重要だ」と語った。

 同社は18年12月には、爬虫類の革などを指すエキゾチックレザーと毛皮の使用を以後廃止すると発表。19年6月には、環境に配慮した素材の開発戦略の一環として、スタートアップ企業のイボルブド バイ ネイチャー(EVOLVED BY NATURE、旧シルク インク)の少数株式を取得した。同社が開発した液状の天然シルクを用いた“アクティベイテッド シルク”は毒性がなく、化学薬品の代替として基礎化粧品からテキスタイル、医療機器などさまざまな製品に使用されている。同8月には、パイナップルの葉の繊維から作られるレザーに似た天然素材「ピニャテックス(Pinatex)」製の帽子を発売した。ほかにも、香水にフランス産のテンサイを原料とした天然アルコールを使用していることから、テンサイ農場における二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいる。香水のパッケージをより小さく軽いものにする、出張をビデオ会議に切り替える、スイスや中国など世界中の工場で再生可能エネルギーの利用率を高めるといったことも行っている。また、ケリング(KERING)がエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領からの依頼を受けて19年8月に策定した環境保護に関する枠組み、「ファッション協定」にも参加している。

 一方で「シャネル」は、コレクションごとに贅を尽くしたショーを行ってきた。故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏の世界観をあますことなく伝えるショーは誰もが息を呑むほどに美しく、会場にしつらえられたロケットやクルーズ船、エッフェル塔やメリーゴーラウンドなど豪華なセットは同ブランドの名物でもある。しかしここ数年、社会でサステナビリティの機運が高まる中、豪華であるがゆえに廃棄物が多いラグジュアリーブランドのショーは批判の的にもなっていた。「シャネル」が19年プレ・スプリング・コレクションで使用したクルーズ船のセットも批判の対象となったが、実はリサイクル可能な素材で作られていたという。ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル ファッション部門プレジデントは当時、「セット全体が再資源化もしくは再利用される」とコメントしている。

 ダバックCSOは、「ショーはブランドのクリエイティビティーを表現する重要なものだ。しかし環境に負担を与えるものであることも認識しているので、専門家らと協働し、再資源化や再利用可能な素材でセットを作るようにしている」と述べた。一方で、こうしたショーが環境に与える影響はあまり大きくないという。同氏は、「当社の二酸化炭素排出量のうち、マーケティングやショーが占めるのは10%程度だ。原材料の調達や生産が26%、製品の輸送が24%を占めている」と説明した。

 「シャネル」は拠点であるパリ以外の場所でコレクションを披露することがあるが、飛行機での移動を減らすため、今後はそうした機会も減るかもしれない。ちなみに、同ブランドは5月7日に21年プレ・スプリング・コレクションをイタリアのカプリ島で開催する予定だが、これは新型コロナウイルスの影響によって延期もしくは中止される可能性がある。

 「シャネル ミッション 1.5」の4つの柱は以下の通り。

• 30年までに、シャネルが展開する事業全体での二酸化炭素排出量を50%減らす。これは販売するアイテム1点当たりの排出量を66%減らすこと、もしくは販売するアイテム1点当たりのサプライチェーンでの排出量を18年との比較で40%減らすことに相当する。実現のため、責任ある調達や天然原料の生産を強化し、デザイン、生産、輸送などの方法を継続的に見直していく。

• 25年までに100%再生可能エネルギーに切り替える。19年現在、シャネルはすでに電気の41%を再生可能エネルギーでまかなっており、21年には97%になる見通し。

•二酸化炭素排出量の相殺。排出量を減らすことを最優先としているが、それに加えて森林の保護や再生などに関するプロジェクトに投資して排出分を相殺する。なお、シャネル全体の排出量の相当分はこうした投資によってすでに相殺されている。

•気候変動に関する取り組みへの投資。地球温暖化の影響を最も受けやすい小規模な農場や起業家を支援するプロジェクトに、今後5年間で2500万ユーロ(約29億円)投資する。また原料やパッケージング開発における新技術やスタートアップ、気候変動の科学的調査などにも投資し、リスク耐性の高い原料サプライチェーンを構築する。

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