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【菊地凛子×菊地成孔インタビュー前編】元日婚の菊地凛子がRinbjöの名前で歌手デビュー

2006年のアメリカ映画「バベル」でのアカデミー助演女優賞ノミネートをはじめ、数々の国際映画で活躍する女優の菊地凛子。15年1月1日に俳優の染谷将太との入籍を発表し、最新出演映画「ノーバディ・ウォンツ・ザ・ナイト」が2月5日開幕の第65回ベルリン映画祭オープニング作品に選出された彼女が、音楽活動にも力を入れる。2014年12月24日に1stアルバム「戒厳令」(タブー)をリリースして歌手デビュー。2015年はライブ活動も行なう予定だ。プロデュースを手掛けたのは、「WWDジャパン」の不定期連載「服は何故音楽を必要とするのか?」でファッションショーの音楽について執筆する文筆家・ミュージシャンの菊地成孔。「WWDジャパン」では今回のリリースを機に、両者の対談取材を実施し、前編と後編でお届けする。まずは今回のプロジェクトの経緯と音楽性、アートワークについて聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):歌手デビューを果たしたきっかけは?
Rinbjö:女優として10年以上経ち、新しい活動をやろうと思った時、音楽がやりたいと思いました。それと年齢的に、女の子や少女と扱われる時期から大人の女性という歳に差し掛かってきました。成熟した人間として「これが好き、これがしたい」と言える自由な時期だと思うんです。多面的であるためにも音楽にチャレンジしたい、とふと思ったんです。イタリアにいた時に。

WWD:菊地成孔さんにプロデュースを依頼したのは?
Rinbjö:本を書いたりラジオで喋っていたり、音楽活動でプロデューサーをやってらっしゃるのは知っていましたが、直感ですね。直感で私の才能を広げてくれる希望を感じた。それで共通の知り合いに音楽ライターの野田努さんという方がいて。日本に帰国して野田さんに成孔さんにお願いしたいと相談し。「あとで伝えとくよ」と言われたんですけど、私そういうの好きじゃなくて。「いま目の前で電話してもらって良いですか?」って電話をかけてもらったんです。
菊地成孔(以下、菊地):ライブ会場に向かう車の中だったんですが、野田くんからの電話にRinbjöが出て、「もしもし女優の菊地凛子と申します。音楽をやりたいんでプロデュースしてください」って言われて。私や凛子さんをはじめ、菊地姓の人はみんなそうなんじゃないかと思うんですが、何事も勢いです。良いものができるという直感が働いて、ほとんど時間的に5〜6秒で、やりましょうとお返事しました。ただ、直感とはいえ、女優としてハイモードに携わっている方なのが非常に心強く。そこは5秒しか考えてないとはいえ決め手でした。

WWDジャパン:Rinbjöのコンセプトは?
菊地:その日のうちに決まったんですよ。電話でOKしたら、「今日何してます?」と聞かれて。「恵比寿でライブです」「え、行きたいです」「じゃあ来てください」とライブに来てもらって。そのまま打ち上げと同時に、打ち合わせをしました。トラットリアの店でイタリアのワインをガンガン飲んでいたんですが、「凛子さん、どんなことをしましょう?」って聞いたら、ほぼ立ち上がりながら、「とにかくエロくてグロいの!」って(笑)。
Rinbjö:そうに決まってますよ(笑)。

WWD:「戒厳令」はヒップホップやエレクトロニカがベースにあります。Rinbjöのラップと朗読が印象的でした。
Rinbjö:「なんでもやりますよ!」って言ったんです。ラップも好きだし、歌詞も書こうとして……。
菊地:白紙に単語がポツポツ置かれたメールが送られてきて。ああ、これは14曲すべて私が書くのだなと覚悟しました(笑)。「反駁 ft. Paloalto」はRinbjöと共作です。やはり女優なので、朗読は言うまでもなくスキルフルで“ウマウマ”でした。ラップは、実力派ヒップホップグループSIMI LAB(シミラボ)のライブにも行ったりと、馴染んでらしたんですが……“ヘタウマ”でした。映画の通り、特徴があって素敵な声なんですよ。不景気な時代はひたすら上手いものが求められがちですが、そんな時代のカルチャーに“ヘタウマ”が浮上する面白さを考えていたところにRinbjöと出会えたので、良い味が出せたと思っています。
Rinbjö:まさにそうですね(笑)。歌詞は虚構ですが、自分の芯のところに落ちてきているので、やはり成孔さんと相性が良かったのだと感じました。いま歌っていて気持ち良いです。

WWD:ジャケット写真にもあるRinbjöの衣装のコンセプトは??
Rinbjö:ずばり「エレガントな乞食」です。日本のメディアに出る時に担当して下さるスタイリストの梶雄太さんと相談して。梶さんからカメラマンの塩田正幸さん、アート・ディレクターの永戸鉄也さん、と数珠つなぎに1日でメンバーをそろえることができました。そういう時は良い方向に向かっているという私の方程式ですね。菊地凛子という名前は女優のもので、本名の菊地百合子も自分のもので、Rinbjöは、それとは別に本気で音楽をやるためにつけた名前なんです。そのRをCDジャケットでは小文字にしたら、ロウソクみたいになって。急に教会チックになりました。
菊地:燭台になったんです。世界中にある異教マリア像と、女性器のアイコンですよね。永戸くんは、私が歌手のUAと8年前に出したアルバム「cure jazz」のジャケット写真を手がけてくださった方でもあるので旧知の仲でした。永戸くんが「昨日突然呼ばれたんですよ」と話していて、「え、僕も突然ライブに行く車に電話かかってきたんですよ」って(笑)。

WWD:乞食をイメージしたのはなぜ?
菊地:美人の乞食みたいな感じが思いついたんだと思うんですね。気持ちはわかる。乞食は人間の捨て猫というか。凛子さんはなんか捨て猫っぽいんで。
Rinbjö:ぽいなあ、そうみたいです(笑)。

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