1. ストスナの草分け、元「フルーツ」の青木正一が新プロジェクト開始 ストリートに感じる“不協和音”とは?

ストスナの草分け、元「フルーツ」の青木正一が新プロジェクト開始 ストリートに感じる“不協和音”とは?

雑誌・書籍・媒体 SNS インタビュー

2019/1/31 (THU) 08:00
青木正一:1955年、東京生まれ。プログラマーを経て独立。ヨーロッパのストリートファッションに感銘を受けて、海外ストリートスナップ誌の先駆けとなる「ストリート」を85年にスタート。96年に、原宿に集まる若者たちのファッションを記録した雑誌「フルーツ」を立ち上げた。2004年に「フルーツ」のメンズ版として「チューン」を発行。15年に「チューン」、16年に「フルーツ」を休止した PHOTO : SHUHEI SHINE

 原宿でのストリートスナップ(以下、ストスナ)の草分けである雑誌「フルーツ(FRUITS)」「チューン(TUNE)」を手掛けてきた青木正一さんが、ストスナの新プロジェクト“ディスコード(DISCORD)”を立ち上げた。まずはインスタグラムなどウェブで発信し、4~5月をめどに雑誌も発行する。「フルーツ」は、ファストファッションの拡大やノームコアブームによるストリートファッションの同質化を受け、2016年12月で発行を休止した。メンズ版「チューン」もその前年に休止している。「フルーツ」休止を発表した際には国内外から惜しむ声があがり、ロンドンを拠点とするウィメンズの「ライアン ロー(RYAN LO)」のように、「フルーツ」にオマージュを捧げたコレクションを発表したブランドまである。今回改めてストスナのプロジェクトを立ち上げたのは、「今すごくファッションが動いているから」。30年以上に渡ってストリートを見続け、それでいて業界に染まらず、いつも客観的な視点を忘れない“ファッション人類学者”のような青木さんに、今のファッションに対して感じていることを聞いた。

WWD:新プロジェクトを始めるにあたって、自身のSNSで“ディスコード宣言”を発信しました。「ストリートファッションは新しいモードに突入している。(中略)この新しいファッションムーブメントが一瞬で消費されてしまわないように、(中略)雑誌を中心とした新しいメディアを立ち上げることにする」という内容です。そこに込めた意図は?

青木正一(以下、青木):(芸術運動のシュルレアリスムを組織・拡大させるきっかけになった)シュルレアリスム宣言ってあるでしょう?あんなイメージです。何かやろうと思いつつ、やらないまま時間だけ経ってしまうから自分に発破をかけるという意味も大きいんだけど(笑)。「ヴェトモン(VETEMENTS)」の登場以降、ストリートファッションがガラリと変わりました。それまではファストファッション全盛で、日本のアパレル企業もどこも厳しいし、日本のファッションはこのまま終わっちゃうのかなと思っていた。それで「フルーツ」も休刊しました。でも、「ヴェトモン」や同じくデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)がデザインする「バレンシアガ(BALENCIAGA)」、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などが、あえて不協和音を取り入れるようなファッションを提案し、ストリートもすごく敏感にそれに反応している。こんなに反応が早かったことって、「プラダ(PRADA)」や「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」が盛り上がった時以来だと思います。

WWD:「不協和音を取り入れている」とは、具体的にどんなことですか?

青木:例えば、「バレンシアガ」のスニーカーの“トリプル S(TRIPLE S)”です。あれって大き過ぎるしはき心地もそんなによくはない。コーディネートにも本来取り入れづらいアイテムです。でも、あえて全体のバランスを崩すことで、ユーザー(消費者)に自分のファッションについて考えさせるという、課題を与えているように感じました。それまでのファッションはバランスを取るというのが基本だったので、いわば真逆です。現代音楽では、ドビュッシー(Claude Debussy)やストラヴィンスキー(Igor Stravinsky)が初めて不協和音を取り入れました。当初はそれに対する評価が定まらなくて、ストラヴィンスキーの「春の祭典」のバレエ初演を観た客同士が喧嘩したなんていうエピソードもあります。でも、結局不協和音は今の時代の音楽にもしっかり受け継がれている。それと同じで、今ストリートで芽生えている考え方も、今後長く続く潮流になるかもしれない。そんな思いから、プロジェクト名を不協和音のディスコードにしました。

WWD:こうした潮流を、スニーカーなどをはじめとした、単なる“ストリート系ファッション”のブームと捉えては、すぐに消費されてしまいます。それとは何が違うんでしょう?

青木:さっき名前をあげたようなデザイナーやブランドの動きって、現代アートの考え方に近いように感じます。マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)が既製品の便器を持ってきて“レディ・メイド”の考え方を打ち出したことは有名ですが、例えば、「ヴェトモン」の18-19年秋冬は、マルタン・マルジェラのアプローチを持ってきて、そこに対してレディ・メイドの考え方を仕掛けているように思う。DHLのロゴプリントTシャツを出していたのも、まさにそういう動きですよね。現代アートの文脈を追いつつ、新しいことを行っている。これは今後も続くコンセプトになっていくのでは。といっても、これは全部「こうなんじゃないかな」という僕の想定です。“ディスコード”の動き出し自体、ちょっと遅いのかもしれない。でも、「フルーツ」だって、その始まりは「何か新しい潮流が始まっているのではないか」というただの想定でした。

WWD:ここ数年の原宿は、海外観光客が集まる街へと様変わりしています。

青木:中国などからの観光客の方たちが、原宿を引っ張っている面も大きいです。彼らはストリートファッションの歴史が浅いこともあって、どんなアイテムでも組み合わせちゃう。誰かが冒険しないとファッションって変わっていかないので、いい流れだと思います。数年前までは日本人のファッションの方が面白かったですが、今は海外観光客の方が臆せずどんどん前に進んでいる。以前は、「原宿は日本のファッションの聖地なのに、それでいいんだろうか」と思う部分もありました。でも、そんなことはどうでもよくなるほど、彼らは前に進んでいる。それに、彼らにとって原宿は単なる買い物の街ではなく、ファッションを見せにくるステージだと思うんです。だから、銀座や新宿にいる観光客と原宿の観光客とでは、明らかに格好が違いますよね。元々、原宿は日本の中でファッションを見せにくるステージでした。それがアジアの中のステージに広がったんだと捉えています。

WWD:ストスナはすっかりファッション系ウェブサイトの定番コンテンツになりました。今の時代、あえて紙の雑誌も出そうとするのはなぜですか?

青木:ウェブサイトのストスナは、一時ほどの有力コンテンツではなくなっているように感じます。最近はPRと連動した仕込みのストスナコンテンツを見ることも多い。あと、紙媒体を出さずにウェブだけでやるのは、覚悟みたいな部分でやっぱり弱いんじゃないかと思いました。今のところ、紙を出すのとウェブだけでやるというのとでは、見え方が違う。もちろん、「雑誌を出しました、はいおしまい」という手法では、今の時代は終わっている。だからこそ、まずは“ディスコード宣言”から始めて、ウェブで少しずつ共感者、賛同者を広げながら、磁場みたいなものを作っていきたいと思いました。新プロジェクトとは直接は関係ありませんが、原宿の事務所も、トークイベントやポップアップストアなどを行っていく場に改装する予定です。

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