ビューティ

創業者の娘、カミーユ・グタール調香師が語る新生「グタール」

 創業から38年目を迎えたパリ発フレグランスメゾン「アニック グタール(ANNICK GOUTAL)」が今秋、「グタール(GOUTAL)」として生まれ変わった。創業者の娘で調香師のカミーユ・グタール(Camille Goutal)に、リブランディングに至った経緯と新生「グタール」のポイントを聞いた。

WWD:リブランディングのきっかけや構想期間は?

カミーユ・グタール調香師(以下、グタール):10年ほど前からそろそろ進化しなくてはいけないと感じていたが実際にリブランディングに着手したのは3年ほど前。母が築いてきたものを変えることについて、躊躇は感じなかった。母がいつも言っていたのは、美しいボトルや外箱も大切だけれど、とにかく大事なことは中に入っているフレグランスそのものだということ。だから香りの作り方は一切変えていない。常に調香師が風景やシーン、モノや音などから感じたことに触発されて作るプロセスも変わらないし、可能な限り品質の高い香料を使うという方針もまったく変わっていない。その一方でブランドにとって重要なのは、変化に対してドアを閉ざさず、オープンな姿勢で柔軟に受け入れること。私たちのブランドは約40年続いている。長く続けば続くほど時代に合わせて進化していかなくてはいけない。そういった意味でデザイン面は、すっきりとしたモダンなものが好まれる現代に合わせて進化させた。特に香水は競争が激しくフレッシュなブランドがたくさん出てきているので、現状維持では残っていくことはできない。

WWD:「アニック グタール」の香りは継続しているということか?

グタール:ほとんど全ての「アニック グタール」の香りは「グタール」に引き継がれている。あまりにも前者に近い香りだけは廃止にしたけれど、フレグランスそのものや作り方は何も変えていない。

WWD:リブランディングするにあたり最もこだわった点は?

グタール:一番のポイントは名前の変更。社内では“グタール”と呼んでいたため私たちにとっては、違和感はないが、一般の人にとっては“アニック”が取れたのは大きな変化なのでは。“アニック”はフランス語では女性のファーストネームなので、それがなくなったことでより普遍的な、男性にも広く使ってもらえるブランドに進化したと思う。もともと、男性も使えるユニセックスな香りをたくさん展開していたにもかかわらず、女性的なブランド名だったために手に取りにくいという声があった。「プチシェリー」のような子どもも使えるような香りから、「オーダドリアン」のように男性も女性も、そして若い人も大人も使いやすい香りもあるので、名前を新たにしたことはよかったと思う。二番目はボトルのデザインを変えたこと。アイコニックなボトルのプリーツ模様を、プリーツの折りを浅くしてすっきりとさせて、モダンな印象に進化させた。

WWD:リブランディングの具体的な作業はどのように進んだ?

グタール:いくつかの段階を踏んで今回のリブランディングを進めていったわけだが、最初の段階では、外部のコンサルタントにメゾンの強みや長所をピックアップしてもらった。初期の段階で、そのどこにフォーカスしなければいけないのかをはっきりさせることができたのがよかった。次の段階で、ブランドの強みの表現の仕方、例えば言葉やデザインについて分析して、デザイナーやイラストレーターに依頼した。

WWD:市場調査も行ったか?

グタール:マーケティングは一切考えずに、どこが私たちの個性でユニークな点なのかを徹底的に調べた。ブランド名を考える際は、“グタール(GOUTAL)”の語源や音が与える印象まで調べてもらった。例えば“グー(GOUT)”は味わいとか趣味という意味合いになるけれど、それがブランドにとって大切だと指摘された。また、末尾にEを入れて“グテ(GOUTE)”になると“滴”という意味になる。それは液状にぽたぽたと滴が落ちるイメージを喚起させるという指摘があり、香水ブランドにとって意味のあることだということが分かった。ブランドの内部にいると見えなくなってしまうことがたくさんあるので、外部のコンサルタントが顧客に対してヒアリングを行い調査してくれたことはとても参考になった。

WWD:6つの物語で香りをカテゴライズする着想はどこから?

グタール:第一段階でメゾンのアイデンティティーやどのようなテーマが大事なのかを明らかにできたおかげで、フローラル系とかウッディ系といった分類で香りを分けるのではなく、私たちのインスピレーション源となっている物語で香りを分けたらいいのではないかと考えた。お客さまにとっても、どんな香りを求めているのかを認識する手助けになるのではないか。私たちのメゾンは詩的であること、文学的であることをとても大事にしているので、物語を章立てにして香りを紹介する方法をとった。必ずしもこれがベストではないかもしれないので、もしかしたら数年後には「アニック グタール」の時のように、香りの傾向で分類するというように変わっているかもしれない。現段階では、メゾンの詩的な部分を強調するという点でも、他のブランドとの差別化という点でも有効な分類法ではないかと思っている。

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