1. “一人勝ち”状態のイタリア高級紡績メーカーの強さの理由

“一人勝ち”状態のイタリア高級紡績メーカーの強さの理由

企業動向 サステイナブル インタビュー

2018/10/15 (MON) 05:00
ピエールジョルジョ・カリアッジ社長 PHOTO BY MAYUMI HOSOKURA

 イタリアの紡績メーカー、カリアッジ社(Cariaggi Lanificio spa)が好調だ。同社はイタリアやフランスのラグジュアリー・ブランドにカシミア糸や高級ウール糸、ビクーニャ糸を供給する。創業は1958年。現在社長を務める2代目のピエールジョルジョ・カリアッジ(Piergiorgio Cariaggi)社長が同社を無二の高級紡績メーカーへと成長させた。2017年の売上高は9000万ユーロ(約116億円)で、18年は前期比22%増の1億1000万ユーロ(141億円)を計画する。

“原料から糸ができるまですべてトレースできるモノ作りを創業当時から進めてきた”

 展示会のために来日した2代目カリアッジ社長に、同社の強みを尋ねた。「2つある。(他の企業がさまざまな素材に手を広げる中で)質の良い天然繊維を集中的に扱っていること。また、創業当時からトレーサビリティー(原料から生産プロセスまで追跡が可能なこと)を追求している点だ。原料から糸ができるまですべてトレースできるモノ作りを進めてきた」と、語り始めたその口調には凄みがある。

 今でこそトレーサビリティーは重視されているが、同社は60年前から追求してきた。「創業当時からのポリシーであり、そこにエネルギーを捧げてきた。糸に限らず、すべての産業で言えることだが、環境を守ることは将来を見据えることと同じ。だから全く疑問はなかった」。

 転機は、「89~90年頃、ラグジュアリー糸の生産に乗り出した時だ。そこからビジネスが急成長した」とカリアッジ社長。高級素材に特化し、ラグジュアリー・ブランドのマーケットの成長とともにカリアッジ社も成長した。競合について尋ねると「気づいたらいなくなっていた。現在競合はいない」と強気だ。現在の地域別売り上げ比率は、ヨーロッパが70%、次いで日本、アメリカ、日本以外のアジアがそれぞれ10%程度を占める。

 カリアッジ社は、トレーサビリティーや製品のクオリティーの追求はもちろん、人や地球環境に配慮したビジネスをしている。環境保護のマネジメントシステムISO14001、労働安全衛生のOHSAS18001(職業上の健康と安全を評価し、従業員の士気を高め組織の効率化を向上を目指すもの)といった国際規格に基づいて事業を構築するヘルシーな企業だ。工場の電力も再生エネルギーを使用している。

伝統文化を守りその継承に貢献する天然染色法を開発

 現在、カリアッジ社が強化しているのは天然染色で、生産量を毎年少しずつ増やしている。特に力を入れているのが、同社があるイタリア・モンテフェルトロ地域に繁殖する典型的な植物グアードを用いた藍色染色だ。「この藍色は当社オリジナルの色だ。さまざまな実験を繰り返したよ」。

 グアードは、アブラナ科タイセイ属の植物でブロッコリーやキャベツ、ルッコラなどとも近く、古くは古代エジプト人がミイラを包む布をグアードで染めた形跡があったという。ヨーロッパでは石器時代から栽培されていたと言われており、ルネサンス時代には織物の染色色素として使われ、盛んに栽培されていた。しかし、アラブの商人によってインドからインディゴ藍がヨーロッパに輸入され、グアードの需要が急激に減った。グアードは染料を抽出するのに時間がかかる一方、インディゴ藍は抽出が容易だったからだ。そのほぼ消滅していた染色法を復活させ、カシミア糸に染めるプロジェクトを2009年に始動した。目的は、植物を使った天然染色の世界を切り拓くためだ。研究と実験を繰り返し、糸を染める技術を確立した。そこには、「地域の特産のグアードを用い、伝統文化を守り、その継承に貢献したい」という思いがあった。上質な天然繊維の生産と持続可能な環境作りに従事したことがカリアッジ社が支持され続ける理由のようだ。

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