全国百貨店のインバウンドに代わる次の狙い

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2016/3/26 (SAT) 13:00

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 2015-16年秋冬のインターナショナル・ブランド(特選)売り場を総括すると、前年売上高を上回る店舗が多く、まずまずの着地だった。宝飾品や時計は、2ケタ増のブランドが多く、ここ数シーズンは、ブランドのアイコンモデルが売れる傾向が続いている。これまで売り上げをけん引してきたインバウンド消費は、訪日観光客が欲しいものを一通り購入し一巡したことから、選ぶ商品も少しずつ変化がみられるようだ。1月27日には、三越銀座店8階に空港型市中免税店がオープンし、さらなるインバウンドの囲い込みを狙う。

 一方で、そろそろインバウンド消費も徐々に鈍化傾向になるのでは、という声も多く聞かれた。インバウンドがこれまでのように伸びないなら、どこに売り上げアップの可能性を見いだせるのか?その可能性の一つがメンズ市場だ。ウィメンズとメンズの複合型ショップのオープンやメンズオンリーのブティックをオープンする百貨店も徐々に増えており、メンズ売り場で潜在顧客を掘り起こしたい考えだ。

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「フェンディ」の“ピーカブー”「フェンディ」の“ピーカブー”

インバウンド消費額の伸び率は緩やかに

 前年割れしている店舗はないが、インバウンド消費額は2015年春夏に比べると伸び率は緩やかに下がった。中国人をはじめとする訪日者は欲しいものを購入し、ある程度一巡したという声が多かった。松屋銀座の宝飾・時計フロアは、6〜8月がピークで9月は為替の影響で落ち着いたが、インバウンドはそれでも売り上げの6割を超える。同店の「シチズン(CITIZEN)」は8割が中国人客で、8月に店舗の外壁や正面ウインドーをジャックしたり、銀座駅やデジタルサイネージを実施したりしたことで売り上げが飛躍的に伸びた。「夏まではスーツケースを持参する方が多かったが、秋以降は、商品を吟味して購入する傾向にある。単価は下がっていないので、ブランドについて勉強したり、商品知識を得たりしてから購入しており、買い方が日本人客に近くなっている。リピーターも増えた」(松屋銀座 宝飾・時計)。


「クロエ」の“ドリュー”「クロエ」の“ドリュー”
 高価格帯の商品は、外国人の購買割合が高く、一方、比較的手の届きやすい商品は、日本人の売り上げがけん引しているとの答えが多かった。「インバウンドは全体の20〜25%。特に売れているブランドは『クロエ(CHLOE)』『ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)』『サンローラン(SAINT LAURENT)』『セリーヌ(CELINE)』『クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)』『ジミー チュウ(JIMMY CHOO)』『ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)』。中でもウエアが強いのは『セリーヌ』でパンツやジャケットコートがシーズンの立ち上がりから売れる。『クリスチャン ルブタン』は11月にバッグのコーナーを新設。特にスモールレザーグッズ(SLG)は、常に品切れでスタッズの付いた長財布が売れた」(松屋銀座)。「8月末を境に中国の株が下がったことで停滞感があり、10、11月は厳しかった。しかし、インバウンドのシェアは単価がアップしたこともあり、約20%まで伸びた」(伊勢丹新宿店3階)。「インバウンドは前年比で比べると特選は165%、宝飾は130%で伸びたが、10月は観光客の数が減ったこともあり、インバウンド消費の伸び率は先シーズンと比べると若干落ちている」(高島屋)。

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「フェンディ」「サンローラン」「ヴァレンティノ」が好調


「ステラ マッカートニー」の厚底シューズ「ステラ マッカートニー」の厚底シューズ
 12月までの暖冬で、コートやロングブーツは苦戦。ウールコートは、プロパー(正規価格)商品は厳しかった。「モンクレール(MONCLER)」は、暖冬の影響に加え、銀座の路面店オープンもあり、百貨店では客足が遠のいたようだ。そんな中、「バーバリー(BURBERRY)」を新規導入した高島屋では、売り上げの半分はコートで、素材、色、丈のバリエーションが豊富でよく動いたという。ブランド別に見ると、「フェンディ(FENDI)」「サンローラン」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ステラ マッカートニー」「クロエ」が好調だ。「フェンディ」は、松屋銀座では8〜12月は前年同期比152%で“ピーカブー”が絶好調。“バイ ザ ウェイ”や“モンスター”シリーズが動いた。伊勢丹新宿店では、ファーアイテムに加え、アイコンバッグの“ピーガブー”がスマッシュヒットで売り上げは同130%以上だった。東急百貨店本店でも8〜翌1月で前年同期比120%。ウエア、アクセサリー共によく、中でもバッグが前年の2倍近く伸長し、“ピーカブー”と“バイ ザ ウェイ”が人気を集めた。「サンローラン」は、松屋銀座では163%で絶好調。10万円台後半〜20万円台前半の商品のバリエーションが充実し、特に“モノグラム”シリーズが人気だ。“カバス”“リヴ ゴーシュ”“サック ド ジュール”も動いた。「客層が広いのが特徴で、特にSLGの売り上気がよく、若い層には、20万円台のミドルレンジのバッグが売れている」(高島屋)。


「ヴァレンティノ」の“ロックスタッズ”シリーズ 「ヴァレンティノ」の“ロックスタッズ”シリーズ
 「ヴァレンティノ」は、伊勢丹新宿店で前年同期比130%以上をマーク。ファーのアウターがヒットし、“ロック スタッズ”シリーズも引き続き売れている。西武渋谷店でも99〜12月は前年同期比130%だった。昨年8月に移設オープンし、インバウンドや日本人の若者層には“ロック スタッズ”が人気だ。「ステラ マッカートニー」は、伊勢丹新宿店では、7〜12月は前年同期比150%以上で、特にバッグ、シューズとSLGが同300%と大きく伸びたウエアも好調だが、厚底シューズに人気が集中した。「“ファラベラ”のバッグは素材、色、大きさのバリエーションが豊富に揃い、相変わらず人気。10万円前半台のバッグもあり価格戦略も奏功している。12万〜13万円の厚底シューズは、当初難しいかと思ったが、売れている」(松屋銀座)。「クロエ」は伊勢丹新宿店で同120%以上の伸びだった。「これまではバッグの“ドリュー”人気一辺倒だったが、“フェイ”や“ジョージア”がネクスト“ドリュー”として動いている」(松屋銀座)。「バッグとSLGが人気でウエアも好調。“ドリュー”のポップアップが当たり若い顧客を獲得した」(西武渋谷店)。メディアで話題になっているアレッサンドロ・ミケーレをクリエイティブ・ディレクターに迎えた「グッチ」は、売り場では浸透するのに少し時間がかかるようだ。

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「ヴァン クリーフ&アーペル」の“マジックアルハンブラ”のネックレス 「ヴァン クリーフ&アーペル」の“マジックアルハンブラ”のネックレス

ジュエリーはアイコンモチーフが人気

 ジュエリーは、2ケタ増のブランドが多く、軒並み好調だった。インバウンドでブランドを代表するアイコンモチーフがここ数シーズン売れていたが、現在でも「カルティエ」では“LOVE”や“トリニティ”、「ヴァン クリーフ&アーペル」では“アルハンブラ”、「ショーメ」では“ジョゼフィーヌ”といった具合に、依然人気が高いようだ。「ブルガリ」は昨年、9月8日から11月29日まで東京国立博物館でレトロスペクティブ展「アート オブ ブルガリ 130年にわたるイタリア美の至宝」を開催し、外商の売り上げアップに貢献した。「『ブルガリ』はインバウンドなら“ビー・ゼロワン”、日本人は“ディーヴァ”に移行。ただ、インバウンドは急速に上質化が進み、日本のニーズとほぼ一緒になってきた」(伊勢丹新宿店)。

 国内ブランドでは、パール商品が根強い人気で、松屋銀座では50万〜100万円のパールが人気を集めた。同店では「ミキモト」の商品ケースを倍に増やしたところ、前年比4倍の売り上げに。また、高島屋もパールが好調で「ミキモト」は2ケタ半ば増の売り上げだった。同店では、グランドハイアットなどのホテルの催事にも力を入れ、日本橋店、横浜店といった外商に強い店舗は予算超えするなど好調だ。「タサキ」は松屋銀座では、インバウンドの売り上げが前年同期比2ケタ後半増だった。今後は、イベントや催事でブランドの知識を深めてもらったり、体験型ツアーで“コト消費”する傾向が増えそうだ。伊勢丹新宿店では「this is japan.」をテーマに、海外ブランドと日本の精神性や技術をコラボレーションさせたエクスクルーシブな商品を企画していくという。

「ブルガリ」の“ビー・ゼロワン”のリング 「ブルガリ」の“ビー・ゼロワン”のリング

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メンズ売り場強化で新規顧客の獲得を狙う


4月21日に新装開店する松坂屋名古屋店の北館「マツザカヤ ジェンタ」 4月21日に新装開店する松坂屋名古屋店の北館「マツザカヤ ジェンタ」

 「新規顧客獲得のカギはメンズだ」と話すのは小田急百貨店の石田基祐MD推進部特選・服飾品担当シニアマーチャンダイザー兼マーチャンダイザーだ。本館1階インターナショナルブティックフロアの「シャネル」のファインジュエリーストアの跡地に3月1日、「バリー」「トッズ」が出店し、中でも「トッズ」は、メンズオンリーブティックとしてオープンする。「小田急百貨店は、交通量が多いのが最大の強み。サラリーマンも多い。すでに『ダンヒル』が同じフロアにあるが、もう少しメンズブランドのバリエーションを増やして、多くの男性にアピールしていきたい」と話す。

 松坂屋名古屋店は、4月21日に北館をメンズ中心の館「マツザカヤ ジェンタ」に改装し、1、2階でインターナショナルメンズフロアを強化する。(関連記事 2月22日号P.5参照)。1〜3階は、メンズを中心とした大人のファッション、4階はゴルフウエア、5階はジュエリーとウオッチで構成する。中でも1階はメンズとウィメンズの複合ショップをメーンにしているのがポイントで、名古屋初出店になる「フェンディ」と「ヴァレンティノ」かが出店する。「モンクレール」は国内最大級のメンズオンリーショップをオープンする。2階には、名古屋地区初の「トム フォード」や日本1号店の「ベルスタッフ」が出店する。3階では東京以外では初の「三陽山長」が入る。すでに大丸京都店2階の特選売り場は「プラダ」「グッチ」「バーバリー」「ドルチェ&ガッバーナ」「サンローラン」をはじめとするブランドがメンズとウィメンズの複合店を構えており、それを松坂屋名古屋店でも踏襲するかたちになる。「ヴァレンティノ」は昨年4月に神戸大丸店をリニューアルし売れ行きが好調で、特にメンズの動きがいいという。大丸心斎橋店、博多大丸店に出店した「クリスチャン ルブタン」はメンズも好調だ。ここ近年は、ウィメンズとメンズのコレクションで同じテーマやムードを提案するブランドが増えており、女性がメンズウエアを着用したり、その逆のケースも多い。さらに、百貨店は、従来の年齢やターゲットで区切るフロア構成に執着しない傾向にあり、今後、このウィメンズ・メンズ複合型ショップがどこまで浸透していくのか注目だ。

松坂屋名古屋店が北館を改装 メンズ中心の館「ジェンタ」に改称

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