1. 「シュプリーム」が大抜擢した日本人イラストレーター 「詐欺かと思ったら本当だった」

「シュプリーム」が大抜擢した日本人イラストレーター 「詐欺かと思ったら本当だった」

キャリア インタビュー

2018/8/24 (FRI) 13:00
オートモアイ:1990年生まれ。デザイン系の専門学校でグラフィックやタイポグラフィーなどを学び、2014年から作品を描き始める。15年に初となる個展を開催しオートモアイとして本格的に活動を開始。普段はインポートシューズの販売を中心に行う企業に勤務する。顔出しNGのためTシャツを持ってもらって撮影した

 今までに数々のアーティストとタッグを組んできた「シュプリーム(SUPREME)」。日本人では「AKIRA」作者の大友克洋や写真家の荒木経惟(通称アラーキー)らそうそうたるアーティストを起用してきた。そんな「シュプリーム」が2018-19年秋冬コレクションとして、“顔のない女性”の絵を描く日本人イラストレーター、オートモアイの作品を使用したTシャツとスケートデッキを8月18日に発売した(オンラインでは25日から)。果たして、オートモアイとは何者なのか?なぜ、“顔のない女性”を描くのか?実は普段はアパレル企業に勤めているという彼女の今までの経歴や「シュプリーム」にイラストを提供した経緯からひも解く。

WWD:イラストを描き始めたきっかけは?

オートモアイ:明確な理由はあまりないのですが、衝動的に「描きたい」と思って2014年頃からイラストを描いて、タンブラー(TUMBLR)というSNSに作品を上げ始めました。ある程度作品が溜まった15年に画廊を借りて個展を開き、実際に「オートモアイ」という名前で活動を開始しました。

WWD:学生時代にはイラストは描かなかった?

オートモアイ:描いていませんでした。もしかしたら社会人になったことで学生の時よりも世界が狭くなったと感じ、何かをアウトプットしたいという気持ちが出てきたのかもしれません。

WWD:普段は会社員として働いている?

オートモアイ:インポートシューズの卸売りなどをする企業で働いています。会社が実は副業禁止なので内緒で活動していたのですが、今回の「シュプリーム」は大きな話だったので上司に報告し、今はギリギリ公認されて働いています(笑)。

WWD:会社員と並行して制作をするのはハードでは?

オートモアイ:かなりハードです。ただ、描くのが早いので、仕事で疲れていても土日で一気に描き上げています。クライアントワークだと、ラフを出す段階を飛ばして、9割方完成している作品を何案か出すこともあります。

WWD:どのような経緯で“顔のない女性”を描くようになったのか?

オートモアイ:活動当初から今の作風なのですが、自分でも理由はよく分かっていないんです(笑)。ただ、顔は描きたくなかった。

WWD:それはなぜ?

オートモアイ:顔を描くことで「〇〇に似ている」といった親近感を見る人に与えてしまうのが嫌で。あくまでドライなものにしたかった。それに作品は背景も一緒に描くので、顔を描くと情報量が多い。人ではなく、“人という記号”を描いている感覚に近いです。トイレの男女や信号機の人のマークと同じですね。私自身も作品の印象を左右しないよう、基本的には顔は出さないようにしています。

WWD:“顔のない女性”には何かイメージがある?

オートモアイ:“消費されていく匿名の20代女性”が着想源です。若い女性ってそれだけである程度価値があるじゃないですか。SNSで若くて可愛い女の子が次から次へと出ていく。でも、気づいたらみんな消えていく。そういった女性たちをイメージしています。個人的にインターネットやSNSをよく見ていることも影響しているのかもしれません。

WWD:初めてのクライアントワークはどういったものだった?

オートモアイ:恐らく私のタンブラーを見て連絡をくれたと思うのですが、海外の方からの依頼で「日本の食文化を紹介するジン(自費出版の雑誌)を作るから、寿司の絵を描いてくれ」というものでした。他にも顔のあるおじさんとか、ビールやハンバーガーとかのイラストもお願いされて「私じゃなくてもいいんじゃない?」と思ってしまいました(笑)。

WWD:現在はどういった仕事をしている?

オートモアイ:インディー系のバンドのTシャツなどですね。音楽が好きで、よくライブに行くので、そこでつながったバンドの方から知人を介して依頼が来ることが多いです。

WWD:活動開始の時からイラストで収入を得るつもりだった?

オートモアイ:そうですね。ただ、友人のイラストレーターたちが売れっ子のように見えていても収入が不安定で苦しそうだったので、自分には難しいのかもとも思っていました。最初は個展で払った会場代だけは意地でも稼いで、活動を続けていく土台を作ろうとだけ決めてました。

WWD:初めて個展を開いた際、自信はあった?

オートモアイ:自信はなかったんですけど、ツイッターで3000フォロワーくらいはいたので、毎日告知をしていたら人が来るんじゃないか、と期待はしていました。実際ある程度人も来て、作品も売れたので会場代はペイできました。

READ MORE 1 / 1 「シュプリーム」からの突然の依頼に「詐欺?」

WWD:「シュプリーム」にグラフィックを提供した経緯は?

オートモアイ:5月ごろにいきなり日本の「シュプリーム」の方から連絡が来たのが始まりですね。4年前、オートモアイとして活動する前にタンブラーに上げていた絵を指定してきて「本国のデザイナーが使いたいと言っているので、ブランド仕様に加筆してくれないか」といった依頼でした。

WWD:「シュプリーム」から連絡が来た時、どう思った?

オートモアイ:ビックリしたのと同時に「何かの詐欺かな?」と疑いました(笑)。4年前の絵だし、アメリカの方でも私のことなんて誰も知らないと思ったので。ただ、去年「シュプリーム」にグラフィックを提供したジョー・ロバーツ(Joe Roberts)についてツイッターで何度かツイートしたことがあるので、もしかしたらそこから私の作品に行きついたのかもしれません。

WWD:疑いながらも、仕事は進めていった?

オートモアイ:5月に依頼が来て、販売は8月とタイトなスケジュールだったので「詐欺なら詐欺でしょうがないな」といった気持ちで特に深く聞かずに淡々と仕事をしていきました。最初はTシャツだけの予定だったのですが、生産納期的にボードも間に合いそうとのことだったのでボード用のイラストも描きました。

WWD:原画にどういったところを加筆した?

オートモアイ:女性が履いている下着などをはじめ、部屋のところどころに「シュプリーム」のものを加えたり、背景を花柄に書き加えたりしています。あと、女性が履いている「ナイキ(NIKE)」の靴下に関してはイラスト提供をきっかけにちゃんと使用許可を得ました。

WWD:イラストには何かテーマがある?

オートモアイ:“Bedroom Tee”と“Bedroom Skatebord”という名前で販売されていますが、原画のテーマは“愛憎”です。簡単に言うと、寝ているボーイフレンドにムカついて殺そうとするという、かなりヤバいストーリーです(笑)。

WWD:描いた当時は自身もそういう感情だった?

オートモアイ:そうです。普段はそこまで個人的な感情は出さないのですが、この時はまだイラストを描き始めて間もなかったということもあり、パーソナルな作品になりました。

WWD:作品には常に何かしらのストーリーがある?

オートモアイ:あります。日常生活で普段考えていることを携帯に文章でメモしてストーリーをストックしています。ただ、それだけだと今後ネタ切れになるかもしれないな、と思って最近は試行錯誤中です。

WWD:「シュプリーム」にイラストを提供したと知らせた時の周りの反応は?

オートモアイ:ストリートアートやグラフィティーアートを作っている友人に驚かれました。あとはツイッターのフォロワーが一気に4、500人増えましたね。中には「シュプリーム」の有名なコレクターの方もいて、やっぱりファンが多いブランドなんだな、と再認識しました。

WWD:今後はどういった活動をしていきたい?

オートモアイ:まずはクライアントワークをもっと増やしたいです。「シュプリーム」の一件をきっかけに、アパレルブランドとのコラボも出てくるといいなと考えています。他には大きいサイズの絵を描いたり、ゆくゆくは海外で展示をしたいですね。

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