谷中の築100年の古民家に移転した大丸松坂屋・未来定番研究所

コラム企業動向

2018/5/6 (SUN) 13:00

 東京・谷中は60以上の寺院が点在する寺町であり、古くからの下町情緒が残る場所として、近年は外国人観光客にも人気のスポットだ。そんな街に建つ築100年の古民家に大丸松坂屋百貨店の未来定番研究所が3月に移転した。

 未来定番研究所が入る2階建ての木造の古民家は、谷中霊園近くの細い通りにある。大正初期の建築で、関東大震災や戦災、そしてバブル期の再開発ラッシュにも生き残ってきた。もともとは鍋などの銅製品を作る工房兼住宅であり、紺色ののれんをくぐって中に入ると、工房だった土間には木づちやペンチなどの工具、古びた作業台などがそのまま残されている。電通出身で建築士としての顔も持つ未来定番研究所の今谷秀和・所長は「改装で手を入れるのは最小限にとどめた」と話す。

 土間から靴を脱いで1階に上がと、8帖の和室がある。オフィスでいうところの会議室、応接室として使われる。ちゃぶ台、床の間、墨絵のふすま、年期の入った柱や梁。座布団に座ると手入れの行き届いた中庭を眺めることができる。急こう配の階段を上がると、スタッフ6人がパソコンを並べるオフィスがある。

 「いわゆるオフィスビルとは異なる環境を作りたかった。働く人の発想も豊かになるし、外部のクリエーターも訪れたくなる仕事場になったと思う」と今谷所長は胸を張る。ファッション関係者やクリエーターが多い青山や表参道という選択肢もあったが、あえてそこから離れた谷中を選んだ。谷中は同社が江戸時代から店を構える松坂屋上野店のおひざ元でもあり、縁も感じさせる。

 未来定番研究所は、大丸松坂屋が掲げる「5年先の未来定番生活を提案する百貨店」というビジョンを実現するための研究機関として、2017年3月に設立された部署である。10年先は現実的ではないが、5年先であれば想像できるし、新しい市場を作るための具体的な提案ができるという見立てだ。「既存の百貨店の研究所は、極論すれば過去の検証をしているだけ。顕在需要も大切だけど、僕らはコンサル的な役割よりも、将来のタネを見つけて育てる方に軸足を置いている」。今谷所長は「ネタよりもタネ」を強調する。ネタはすぐ使えるのだが、すでに他も手を付けている。タネは自分たちで実りができるまで育てる。

 社長直轄の部署であり、関わるプロジェクトは多岐にわたる。先行してスタートしたオウンドメディアの運営、売り場や商品とクリエーターとの仲介、全国に19店舗ある大丸松坂屋各店のブランディング、売り場からのあらゆる相談事への対応はもとより、昨年11月に開業した上野フロンティアタワー(上野パルコ、松坂屋上野店)のコンセプト立案にも携わった。今年は松坂屋上野店の250周年プロジェクトにも参画し、「地域の歴史と結び付けて盛り上げていきたい」と話す。

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