ロンドン・メンズデザイナー直撃第2弾 かつてのヴァージルの右腕、サミュエル・ロス

インタビュー

2018/2/3 (SAT) 13:00

 ロンドンに明るさをもたらすであろう、注目の若手メンズデザイナーへのインタビュー、2人目は「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)のアシスタントを務めた後、2015年にブランドを立ち上げた「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL)」のサミュエル・ロス(Samuel Ross)。労働者階級の家庭で育ち、15歳の頃「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」のアイテムをリメイクし販売した。その後、グラフィックデザインの道へ進み、友人と共に「トゥエンティーフォー(2WNT4)」を立ち上げる。その活躍がヴァージルの目にとまり、2年間彼のクリエイティブ・アシスタントを務めた。2015年に自身のブランド「ア コールド ウォール」を発表。「ロックなんて古い」と言い切り、イギリス文化の新しい側面を表現しようと試みる、まだ27歳のデザイナーだ。まるで生きているかのように変容し続けるロンドンのカルチャーを再解釈しブランドに投影する。

──ブランドのコンセプトは?

サミュエル・ロス「ア コールド ウォール」デザイナー(以下、ロス):「ア コールド ウォール」は自分の体験とイギリスのカルチャーを反映したブランド。これはイギリスの階級社会がと環境を考えていた時に偶然生まれたんだ。労働者階級のストーリーに上流者階級が持つ理性と感性を加えたようなブランドだよ。

──ファッションではなくプロダクトデザインとグラフィックデザインを学んだそうだが、なぜファションの世界に?

ロス:15歳からデザインを研究し、21歳でデザイン会社にスカウトされて広告業界でグラフィックデザイナーをしていた。23歳の時、ヴァージルと出会ってファッションの世界に入ったんだ。デザインという仕事に惹かれたのは、学ぶことにゴールがなくて、創造したものを形にすることが大変だと感じたからだ。中でも、ファッション業界は常に変化し続け、ますますスピードアップが求められる刺激的な世界だよ。最も表現力を要する業界だと思うね。

──ヴァージルとはどのように出会った?

ロス:作品に惹かれてインスタグラムをファローしたらすぐフォローバックされて、彼から「ポートフォリオを見せてほしい」と連絡が来たんだ。当時はデザイン会社で働きながら友達とブランドをやっていて、ステージデザイン、インスタレーションアート、音楽などを制作していた。その後、会社を辞めて彼のアシスタントとして働き始め、「オフ-ホワイト」の服だけでなくさまざまなプロジェクトに携わりながら世界中を巡り、それまでの経験を生かすことができたよ。彼は自分にとって師であるだけでなく、友人としても迎え入れてくれてとても幸運だと思う。

──ヴァージルの下で働いた経験が、「ア コールド ウォール」を立ち上げるきっかけになった?

ロス:そうだね、当初はもう自分のブランドはやらないだろうと思っていた。けれど、まだまだイギリスには知られていないストーリーがあって、そのストーリーは現在進行形で変化している。その事実に気付いてから、当時の僕の仕事とギャップを感じるようになり、ブランド立ち上げにつながった。

──具体的にストーリーとは?

ロス:イギリスに存在する、見向きもされない歪曲されている文化。まだその文化に名前はないけれど、それは労働者階級や移民、ブラック、僕がいる世界で生まれたものだ。音楽でもパンクがイギリスの文化と言われるけれど、もうすでに過去のもので、僕らにとってはグライムの方が身近なんだ。僕はアンダーグラウンドで起こる形を持たない瞬間的なできごとを、洋服に転化させ表現している。イギリス文化の新たな側面と社会経済の問題について、感情と現実の両方から語りかけることが目的だよ。

──ストーリーを語りかけるためにどんな経験を重ねてきた?

ロス:僕の父はセント・マーチン美術大学を首席で卒業した。1980年代当時、黒人にとっては非常にめずらしいことだった。しかし、父は家を出ていってしまった。残された母は社会学と心理学の講師として働いたが、裕福ではない労働者階級の家庭だったんだ。家はロンドン市内でも黒人が集中しているエリアにある集合住宅だった。目の前には“ア・コールド・ウォール(冷たい壁)”が立ちはだかって、壁の向こう側へ行くことも見ることもできなかったけれど、アートの世界には階級社会は存在しない。僕と世界をつなぐ唯一の手段だと感じたんだ。5歳からデザインに取り組んで、何かを創造することに夢中だったね。

──あなたの活躍が示すように、人種問題も含めた社会は時代と共に変化をしているが、現在はどのように感じているか?

ロス:僕たちは、創造性がビジネスの先駆けとなる時代にいると思う。これまでは、大学に通いファッションを専門的に学ぶことがファッションデザイナーへの近道だったけど、今は違う。無名の若者たちが生み出した文化を“モダン”と捉えて、ストリートウエアを“アーバンラグジュアリー”なんて称するだろう。皮肉だね。時代の進化と同時に、その変化に対応できず外へ押し出されている人がいることは事実。ロンドンだけではなく、世界中の資本主義社会で起こっていることだ。

──あなたはデザイナーとして、イギリスの新しいカルチャーの先導者の役割を担っていくのか?

ロス:そうだね。必ずしもそれが美しく心地よいものでなくても、イギリスの新しい文化やアイデア、方法を示していくよ。商業的に生き残るのではなく、本当に望まれるブランドに成長させていきたい。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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