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スペイン映画に見る”鬼才”ペドロ・アルモドバルの世界とは?

 スターチャンネルは10月1日から、スペイン映画の鬼才と呼ばれるペドロ・アルモドバル監督の特集「鬼才ペドロ・アルモドバルの世界」をスターチャンネル2(BS201ch)で放送!日本とスペインの交流400周年を祝う事業の公式プロジェクトの一環として実施する同企画は、さまざまな代表作を通して、彼自身の映画人生を多角的に見ることができるスペシャルな特集だ。ここでは、スターチャンネルで放送される5作品の鮮やかな色彩でつくられた映像美や作中の衣装にフォーカス!

 

 

1:【オール・アバウト・マイ・マザー】

 最愛の息子を事故で亡くしてしまった主人公マヌエラが、別れた夫に息子の死を告げるためバルセロナへ。妊娠中のシスター・ロサと同居を始めるが、彼女は出産後にエイズで死んでしまう...。

 

 この映画で何とも印象的なのは、マヌエラとエステバンが大女優ウマ・ロッホにサインをもらおうと楽屋裏で待つシーンに登場する、彼女の赤いコートと原色のパラソル。その他のシーンも、アーティストがつくり出した絵画のような独特の色使いだ。ブロンドに映えるリップや衣装、インテリアには、母親の強さと情熱をあらわす"スペインレッド"が用いられている。

 

 単色使いのシンプルな服であっても、女性らしいクラシカルなフォルムを選ぶことで、時代に従順に生きてきた母親像を表現。赤をふんだんに使った、アルモドバル監督の強烈な色彩感覚を見せつけた一作は、アカデミー外国語映画賞を受賞した。どんな困難もしっかりと心に受け止め、強く生き抜く女性たちの姿はヒールを履いた現代女性への讃歌に。

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2:【トーク・トゥ・ハー】

 愛する女性が共に事故で昏睡状態になった男2人を描いた作品。バレエダンサーのアリシアを4年間献身的に介護してきたペニグノと、恋人の女闘牛士リディアが昏睡状態のマルコの間に芽生えた友情とは?

 

 アリシアが着ていたシワひとつない病衣は、クリーンな印象のアイボリー。昏睡状態でも常にアリシアの身だしなみを気遣っていたペニグノの想いを表すかのような清潔感に溢れている。リディアが事故に遭った闘牛のシーンなど、スペイン映画ならではのカットは実に色鮮やか。闘牛士が手にした布(ムレータ)は、タイツと同じヴィヴィッドなピンク。白とゴールドの刺繍やビーズをふんだんに使ったマタドールの衣装も印象的で、さまざまなアングルから撮影した着替えシーンからは、監督が洋服を通してパーソナリティを描こうとした意図が垣間見える。

 

 作中に登場したペニグノが観たというモノクロの喜劇は、性的描写をシュールに表現したもの。真っ白なレースのワンピースからのぞく女性の身体を美しく描いている。「ヴェルサーチ」や「ジョルジオ アルマーニ」「ジャンポール・ゴルチエ」などの洋服で、強い女闘牛士と純粋なバレエダンサー、昏睡状態で無防備な女性を表現。あらゆる角度から"女性の美しさ"を可視化した一作。「内なる美」とは?純粋な心を持つこととはどういうことか?登場人物から何か学び取れるはずだ。

  

 

3:【バッド・エデュケーション】

 フランコ政権下の抑圧的な神学校での少年2人の友情や初恋を描いた作品。ゲイであることをカミングアウトしたアルモドバル監督自身の自叙伝的な一作とも言われている。

 

 女装した美しいイグナシオはもちろん、少年時代の彼が美声で歌う「ムーン・リバー」が印象的。室内のシーンもほぼ自然光で撮影するなど、青みがかった薄暗さで独特の世界観を表現しています。ドラッグクイーンの踊るキャバレーでは、ピンクやゴールドを用いたゴージャスなドレスが登場。作中では、「ジャンポール・ゴルチエ」やイタリア発のシャツブランド「ナラカミーチェ」のシャツなどが使用されているそう。

 

 シリアスなシーンでロイヤルブルーを使うなど、背景となじみつつ鮮やかな色彩の衣装で登場人物の魅力を淡々と描く手法はアルモドバル作品ならでは。"花柄のシャツにジーンズ"など、シンプルながらも、同性を魅了する当時のラテンなゲイ的ファッションが垣間見える。性差を超えたメンズスタイルが提案される現代との比較も面白い。

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4:【ボルベール】

 アルモドバル監督の故郷ラ・マンチャで生きる強くたくましい女性たちを描いたヒューマン・ドラマ。タンゴの楽曲「ボルベール(Volver)」が題材。肉体関係を迫ってきた父親を、パウラが誤って殺害してしまうという事件が起きる。

 

 2006年のカンヌ国際映画祭では、主演のペネロペ・クルスほか6人の女優全員が最優秀女優賞に輝き、話題をさらった作品。マドリッドを舞台にした同作は、白壁に映える鮮やかなグリーンの手すり、庭のロッキングチェア、赤い花瓶など、セットの配色が抜群。小道具からアクセサリーケースに並ぶブローチまで、アルモドバル監督のセンスが色濃く感じられます。ライムンダがレストランを開いたときに着ているギンガムチェックのカーディガンなど、1950年代の南欧に顕著な淑女のデイリーファッションが特徴。地元の女性たちが着用しているシャツとカーディガンのコーディネイトなど、スタイリングのバリエーションが豊富だ。

 

 ブランドは「プラダ」や「ジョルジオ アルマーニ」「ドルチェ& ガッバーナ」「ピエールカルダン」を使用している。ペンシルスカートを取り入れたレトロシックなトレンドスタイルは今秋の参考になるかも。さりげなくもバランスの取れたアクセサリー使いも見逃さないように!

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5:【抱擁のかけら】

 アルモドバル監督と彼のミューズであるペネロペ・クルスが、4度目のタッグを組んだ恋愛ドラマ。交通事故で視力を失った映画監督マテオ・ブランコと女優志望の美しい女性レナの運命の恋を描いた...。

 

 映画監督、女優、映画の出資者による三角関係が渦巻く一作。秘書だったレナが女優のオーディションを受ける場面から、パーティドレスを着た華やかな映画の撮影シーン、ウィッグを選ぶ舞台裏まで、彼女のさまざまなファッションを楽しむことができる。ボーダーのパラソルや、ガスパチョを作る時の色鮮やかなキッチングッズなど細かい部分にも注目。なかでも、ブラックドレスにプラチナブロンドのウィッグをつけたペネロペの美しさはため息もの。

 

 マテオが視力のある時に撮影した作品「謎の鞄と女たち」に出演したレナは、「ピエール・カルダン(写真:上)」のレトロワンピースを着用している。出資者のマルテルと別れ話をするシーンでは、深紅のセットアップスーツにオープントゥのヒールという情熱系コーディネート。スペイン発のブランドの「ロエベ」をはじめ、「プラダ」「クリスチャン ディオール」「ブルガリ」「ケンゾー」と有名ブランドの洋服のほか、目玉のついたピアスや「シャネル」の石付きゴールドチェーン(写真:中)など、他の4作品と比べエッジィなアクセサリーが登場している。

  

 日本からスペインへ慶長使節団を派遣して400周年にあたる今年は、日本とスペインの記念すべき交流年。文化事業に加え、政治、経済、科学技術、観光、教育など、各分野の交流事業を行なうことで、両国の相互理解を深め、新たな展望を拓く契機とすることを目的としている。記念すべき文化交流の年に放送される「鬼才ペドロ・アルモドバルの世界」。一挙5作品を集めた特集をお見逃しなく!!

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■「鬼才ペドロ・アルモドバルの世界

スターチャンネル2(BS201ch)

10/1(火)?4(金)4日連続放送
10/6(日)一挙放送 ほか (全5作品)

http://www.star-ch.jp/spain/

 

 

『トーク・トゥ・ハー』(c) EL DESEO, S.A. 2002『オール・アバウト・マイ・マザー』(c) 1999 - EL DESEO - RENN PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINEMA『バッド・エデュケーション』(c) EL DESEO, D.A, S.L .U.‐2004『ボルベール<帰郷>』(c) EL DESEO, D.A, S. L. U. M-50529-2005『抱擁のかけら』(c) EL DESEO, D.A., S.L.U.

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