ファッション

「グッチ」2016-17年秋冬ミラノ・コレクション

REPORT

ギミックガールが出合ったストリートプレイ 2年目の「グッチ」ミケーレの挑戦

ショー予定時刻の1時前に、「スタートが1時間遅れる」というオフィシャルアナウンスが届いた。ミラノ・コレクション初日のハイライトである「グッチ(GUCCI)」の遅延に、来場者は急きょスケジュールを組み直し、その後ショーを予定していたブランドも「グッチ」を鑑賞する来場者の予定を見計らい、少しずつ開始時刻を調整した。「グッチ」はそれほど、ミラノ・ファッション・ウイークでの存在感が大きい。

 会場は前回と同じ、元駅舎の倉庫のようなスペース。しかし、2016年春夏のショーの時のように植物を置き、デコラティブな装飾の床や椅子を用意するのではなく、黒いひな壇の客席に黒い床、黒い壁と全てを黒で統一し、光を一切遮断した異様な空間を用意した。客席は一方のみに作られ、その前に黒いランウエイが敷かれ、その向こうに黒い幕が平行に下がっている。

 暗い会場入り口で配られた目が覚めるような黄色い紙のコレクションノートの一文目には、「変化を炎上させるには、“ライゾマティック”の思想でなけれなならない」と、「リゾーム・・・序」(1987年)を共著したフランスの哲学者、ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの名前を連ね、つづられている。ファーストルックは、ダークなムードと引き立つパイソンレザーの純白のトレンチコート。肩幅を広げ、さらにパフスリーブを施してボリュームを加えた。シンプルながらも、どこか挑戦的だ。続いて、オールパステルピンクでまとめられたファーコートに手袋、斜め掛けしたチェーンバッグ、タイツ、メタリックが光るサンダル。このルックの他にも、同じように小物を使ったシックな赤やエメラルドグリーン、マスタードイエローのワンカラーコーディネートでエレガントにまとめている。一方で、ミケーレが好む大花柄や動物モチーフを大胆に描いたアイテムがあるが、これまで目立たなかった幾何学柄やオプアートもツートーンでシンプルで力強く描き、印象付けている。

 今シーズンで2年目を迎えたミケーレの「グッチ」で感じたのは、彼が挑戦した「変化」である。ミケーレが新しく見せたのが、ストリートやアートの発想。今回、カナダ出身のアーティスト、トラブル・アンドリューとコラボし、彼の「GG」アートをのせたアイテムが次々登場した。トラブル・アンドリューによる「グッチ」にオマージュを捧げたパロティー作品を、ミケーレが気に入り今回のコレクションに採用したという。スプレーやペイントで描かれたグラフィティーは、どちらか言えば脱力感のあるアート。これらを洗練された「グッチ」のファーコートの背中やバッグなどに用い、違和感をプラスした。また、袖にファーをつけたビッグサイズのデニムジャケットやミリタリージャケットも新鮮で、ラストに登場したバッグパフスリーブのシフォンドレスには、首回りにアルファベット、背中に「25」のナンバリングをのせ、新たな一面を見せた。

 さらにモデルも、これまでのような男性的な女性や女性的な男性は少なく、黒いモーニングスーツや野暮ったいベルベットのパンツを着たメンズや、シフォンやフェザー、透け素材のボリュームドレスを着たウィメンズなど、ジェンダーの違いもはっきりとさせた印象だ。学生風モデルたちの千鳥足が微笑ましい。

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