「差別のない世の中」を作るには? LGBTが語る同性婚の未来

インタビュー

2015/5/25 (MON) 13:00
左から、西田卓矢デイカジャパン社長兼クリエイティブ・ディレクター、寺田和弘EMA(Equal Marriage Alliance)日本代表、小林隆子『ゼクシィ プレミア』元編集長

 5月25日発売の「WWDマガジン」では「LGBT Forever モードは性別を超えるのか?」を特集する。同特集で、自身の同性婚の様子を公開したフレグランスブランド「デイカジャパン」を展開する西田卓矢社長兼クリエイティブ・ディレクターが、5月16日、「差別のない世の中」をテーマにしたトークイベントに出演した。

 「ニールズヤード レメディーズ」表参道本店グリーンスクエア2階のカンファレンスルームで開催されたイベント「アロマを通じてつながる心」は、二部構成。第一部はハンドマッサージのレクチャーとワークショップ、第二部は「オープンマインドな暮らし方」と題し、小林隆子『ゼクシィ プレミア』元編集長、同性婚が認められる社会を目指すNPO法人、EMA(Equal Marriage Alliance)日本の寺田和弘・代表、そして西田社長兼クリエイティブ・ディレクターによるトークショーが開催された。

 「ニールズヤード レメディーズ」のオーガニックアロマオイルと精油を使ってゲストそれぞれが配合したオイルでハンドマッサージを行って、参加者の体も心もほぐれた中、小林氏の司会によって第二部がスタートした。

同性婚とLGBTの権利

小林:私が同性婚について考えるようになったのは、ブライダル誌を担当することになった6年ほど前、もともと知り合いだった西田さんに「同性だと結婚式ってできないの?」と聞かれたことがきっかけでした。いろいろと調べましたが、当時、問い合わせれば同性の結婚式を挙げられるという式場でも表立ってそれを公表しているところはあまりありませんでしたし、LGBTの方々も「日本で結婚式は無理でしょ」と思っている人が多くいました。けれど私は、「(法律的に)婚姻は認められなくても結婚式は挙げられる」ということを広めたいと思い、その後、担当していたウエディング誌で3年にわたってLGBTウエディングを取り上げました。最近では4月に渋谷区のいわゆる「同性パートナーシップ条例」が可決され、同性婚が話題に上がることも多くなりましたよね。

寺田:同性のカップルを日本で初めて公に認めたという意味は大きかったと思います。ただ、メディアでは「同性婚ができるようになった」と誤解されるような報道もありましたが、そうではありません。この条例はパートナーであるという証明書を今後、渋谷区が発行するというものですが、それがあっても税金の控除の対象にはなりませんし、相手が万一死亡しても相続ができないなど、男女のカップルと同等の権利が認められるわけではないのです。

小林:日本ではまだ法律のバックアップはないけれど、自治体からバックアップするということなのですね。では、世界ではどのような状況なのでしょう?

寺田:現在、44カ国で同性婚が認められており、アメリカ50州のうち35州とワシントンDCで認められています。また今後、アメリカ連邦最高裁によって憲法上、アメリカ全土で同性婚が権利として認められるということになりそうです。また、LGBTの人口における割合は5~7%、20歳代の女性では14%という調査結果もあるようです。クラスに1~2人はいるという計算ですね。

READ MORE 1 / 4


同性婚は男女のカップルと変わらない

小林:ところで西田さんは、日本では法律的に同性婚が認められていないという状況で、なぜ結婚式を挙げようと思ったのですか?

西田:「LGBTで結婚式を挙げたい人」を探していたホテルで働く友人に、「誰か紹介してほしい」と言われていました。いろいろと探したのですが、私のパートナーが「自分たちでいいじゃないか」ということを言い出し、最初は正直言ってノリで決めたんです。けれどその後、実際に進めていく際にはお互いのことをよく考え、本当にこの人でいいのかと深く考え、お互いの考えが違った部分をすり合わせていったり、マリッジブルーになったり……。

小林:私は打ち合わせの際から関わっていましたが、男女のカップルと何も変わらないんですよね。100組のカップルがいたら100通りの形があるように、西田さんたちもそのうちの一つなんですよね。本当に何も変わらない。

西田:男性同士の結婚式というのは婚姻届というしばりがない分、お互いがより通じ合っていないと単なるイベントになってしまう、だからそこは悩みました。式には会社関係の方も多く呼んだので、8割はLGBTではないストレートの方でした。普段、わざわざカミングアウトして仕事をしているわけではないので、当日来てみたら男性同士の結婚式ということにびっくりされた方も多かったと思います。

小林:私も参加しましたが、本当に感動的なすてきな結婚式でした。「愛には男女とか関係ないんだ!」と周りに話したという方も多かったですよね。

西田:結婚式に参加して、ストレートの人がそう思ってくれたことが一番うれしかったですね。

小林:ウエディング誌の編集長時代には、「なぜ男性(女性)同士の結婚式を載せるのですか?」と読者から素朴に聞かれることがありました。その方は婚姻を結べないと結婚式ができないと思っていたのでしょうね。そんなときは、「一緒に生きていきたいというパートナーが見つかったら皆にお知らせして、そしてお祝いしてほしいという気持ちになりますよね」というと、素直に納得してくれる。「知らない」ということはとても大きな問題なのだと思いました。

寺田:各国で「同性婚に賛成しますか?」という質問をしたところ、デンマークで8割、アメリカで6割、日本で3割ほどが賛成と答えたという調査があります。そして日本では分からないと答えた人が4割もいた。さらに「身近にLGBTの友達いますか?」という質問については、いないと答えた人が7割以上。LGBTという存在を知らないため、イメージがわかないのだと思います。


カミングアウトしたキッカケ

小林:ところで、お二人はどのようなタイミングでカミングアウトしたのですか?

寺田:私の両親は、男性は女性を、女性は男性を好きになるものだと思っている人だったので、20代のとき「結婚しないのか?」「孫は?」とさんざん聞かれました。息子の幸せを願ってくれていることは分かるけれど、正直言って聞かれることが面倒くさいし、心苦しいという気持ちが強くなり、20代後半にカミングアウトしました。両親は驚き、「育て方が悪かったのか」と悩んだようです。けれど、以前に住んでいたデンマークでは何十年も前から同性婚が認められていることなどを説明し、だんだんと理解してくれるようになりました。そして「思春期に悩んだことと思うけれど、その時にわかってあげられなかったことは親として失格だと思う」と言われました。それを聞いたとき、私は親が自身を責めることはおかしいし、社会がそういう風潮だったのだから仕方なかったと思いました。そして、そんな社会を変えたいと思って、NPO活動を始めたんです。

西田:私の場合ですが、結婚式を挙げるとき、両親には知らせていなかったんです。参加した妹が式の前日に両親に話したことから、知ることとなりました。父はもちろん動揺したと思いますが、「そうだったんだ」とすんなり受け入れ「おめでとうと言っておいてくれ」と妹に言ったそうです。40代後半で独身だったわけですから、なんとなくわかっていたのかもしれませんね。九州男児の父が理解してくれたのはメディアの力もあったように思います。以前にLGBTの人が親にカミングアウトするというドキュメンタリー番組をテレビで見ていたとき、まったく理解しないテレビの中の親に「自分だったら理解してやるのに」と言っていたそうです。頑固な九州男児の父が、です。母も、渋谷区の条例のニュースなどLGBTが多く取り上げられ、耳にするようになって段々と理解できるようになったようです。


知ることがLGBTの第一歩

小林:現在のように、先にいろいろと情報が耳に入っていれば「あ、そうなのね」と受け入れられたのかもしれませんね。まず知って理解すること、そしてそれを広めていくことが本当に大切なのだと思います。日本では「同性婚に反対」という人が少ないのに「分からない」という人が多いわけですが、その人たちが「知る」ためにはどんなことが必要だと思いますか?

寺田:西田さんたちのように結婚式を挙げることで広められるのはいいことだと思います。そして法律的に同性婚が認められるようになるためには、今、自分の周りにはLGBTがいないと思っている人たちが彼らをきちんと見えるようになること、そのためにはカミングアウトしやすい社会をつくり、子どもたちもそれを知り、社会全体がオープンになり、皆が自然と受け入れられるようになるべき。国会ではやっと超党派の国会議員連盟ができ、2020年の東京オリンピックに向けてLGBTへの差別をなくす取り組みがスタートしました。世界44カ国で認められていることが日本で認められていない、その認識を広め、例えば皆さんも自分が住んでいる地域の国会議員に電話やメールをするなどしてアピールするのも一つの手だと思います。

小林:数年前、誌面に登場してもらう同性カップルを探したときには、見つかるまで2年間かかりました。それが昨年4月くらいから情報がスムーズに入るようになり、当たり前のように同性婚の紹介ができるようになった。渋谷区の条例が可決された頃から、同性婚を前面に出す式場も増えてきました。LGBTのことを知っていて当たり前、同性婚も当たり前という時代がすぐそこに来ている、そんな感じがします。

最後に、質問のある方はいらっしゃいますか?

ゲイの男性:僕は両親にカミングアウトしましたが、そのことを今になって後悔しています。自分自身はそれまで隠してきたことを言ってすっきりしたし、親は自分のことを愛してくれていて理解してくれた。けれど両親は、息子がゲイであることを周囲に言えていないと思うんです。自分が背負っていた十字架を両親に背負わせただけで、両親は一生それを背負って生きていかなければならない。例えば近所の人に「息子さん結婚しないの?」と言われたときに何も知らずに「なんでしないのかしらね」と答えられた方が幸せだったのではないかと思うのです。若い時にカミングアウトしましたが、もっとよく考えればよかったと思っています。

寺田:そもそも誰かが十字架を背負わなければいけない社会がいけないですよね。その必要のない社会をつくっていくべきなんです。世界ではすでにそれが主流であり、日本の社会は変わっていかなければいけないし、まずは一人一人がそう認識していく必要があると思います。

西田:世界が同性婚を認める方向に向かっているし、日本でも社会が変わっていけば、と思います。無関心な人たち、気付いていない人たちに知ってもらいたいという気持ちもあって、結婚式を挙げたという面もあります。「うちの子はLGBTです」と親が堂々と言える社会にしたいですね。

寺田:NPO法人「EMA日本」では、同性婚を法律で認められるよう、個人のプライバシーが守られる形での署名を行っています。よろしければアクセスしてみてください。

LINEでフォローして最新ニュースをチェック 友だち追加
2018 SS MENS COLLECTION NOW!!

フォーカスランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間
ブランド検索
シーズン検索
お問い合わせ各種

デジタルデイリーについての問い合わせは
下記よりお選びください。

false true false false true true true